ほんの一時の自由
それから数日が経った。
美弥のケガも段々と良くなっていた。
『美奈~もうすぐバス来るよー』
『はーい!』
母が急いで私の手を繋いでバス乗り場へ向かう。
私は幼稚園の年長さんで、毎日幼稚園バスで通っていた。
幼稚園はとても楽しかった。
でも一番私が楽しみにしていたのは幼稚園から帰ってくるといつも漂ってくる母が作る甘い焼き立てのお菓子の香りが大好きだった。
幼稚園バスに乗ると3人の男の子が待っていてくれた。
『みな~』『みなちゃん』『みなちゃんー』
幼稚園バスの中でいつもの3人の男の子が手を振ってくれた。
『まーくん、かずくん、としくん♪』
私も3人に手を振って返した。
私は幼稚園が大好きだった。
幼稚園に行くと楽しい事だらけだったから。
3人と遊んでいたらお姫様になった気分になった。
家では奴隷の私はお姫様に憧れた。
その日も4人で公園に出掛けていた。
4人で遊ぶ時間は楽しくていつの間にか16:00を回っていた。
『そろそろ16:00だよーかえろうよー』
『え…もうそんなじかんなの?』
『じゃあかえろうか!』
『…………………。』
私は無言になった。
『みな??』
『…かえりたくない……。』
いつもと様子が違う私に男の子3人達は戸惑いを見せた。
『みなちゃんなにかあった??』
『うん…じつは…』
どうしてその日彼等に言おうと思ったのかはわからない…でも、私は初めて男の子3人に姉の話をした。
『そんなひどいおねえちゃんは、おねえちゃんじゃない!』
『みなちゃんはかえらなくていいよ!!』
『ぼくたちものこるから!ここにいよう!』
それぞれが口にした。
『みんな…』
私はその気持ちが嬉しかった。それと同時にやっぱり家はおかしいんだと思った。
それから17:00のチャイムが鳴った。
『17:00になっちゃったね…おかあさんにおこられちゃうね…』
かずくんが言った。
『…ごめんね…みんな…』
私は皆に謝った。
それでも私は家に帰りたくなかった。
時間が過ぎて行き公園にいた子供は皆いなくなり、外は真っ暗になっていた。
『ねぇ…そろそろおそとまっくらだよ…かえろうよ』
としくんが言い出した。
『とし!おまえ!みながかえったらおねえちゃんにやられるんだぞ!!』
『うん…わかってる…でも………』
まーくんはとしくんに向かって言った。
『…ごめんね…としくん…うん!かえろうよ!おそとまっくらだし!』
私は意を決して言った。
これ以上私のワガママに皆を付き合わせられない!そう思った。
『でも!みなはかえったら…』
まーくんが心配してくれているのがわかる。
『だいじょーぶだよ!それに、このままだとママにおこられちゃうしね!』
そう言って私は笑った。
『みながそういうなら、かえろう!』
皆嬉しそうな顔をした。
その顔を見て私は私のせいで悪い事をしたと思いお姉ちゃんの事は誰にも言っちゃいけないと悟った。
その日4人はママ達にとても怒られた。