幼少時代
それは、私が物心ついた頃から始まっていたのだろう。
気付いた時には毎日毎日姉の顔色を伺う生活をしていた。
どうしてそうなってしまったんだろう?
考えてもわかる筈もない。
5歳だった私にはそれが現実意外のなにものでもなかった。
この時姉は7歳だった。
物心ついた時から始まっていたであろう姉の仕打ちは私は姉が言った事は絶対に実行しなければいけないのだと思うのには十分な時間を過ごしていた。
この頃は、父親も母親も元気で、妹も産まれたばかりだった。
『美奈~』
私を呼ぶ声がした。
『なぁに?ママ?』
私は母にそう返事を返した。
『今美弥寝てるから、起きたら美優と一緒にちょっと見ててあげてくれる?ママ洗い物してくるから』
美優は姉の事だ。
『おねえちゃんといっしょに?うん♪わかった!』
そう返事をすると母はキッチンに洗い物をしに行った。
『美弥~♪可愛いね♪』
姉は寝ている美弥の事を呼んだ。
『おねえちゃん…よんだら、みやがおきちゃうよ…』
私は姉が美弥を起こしそうで怖かった。
『は?そんなの起きたらお前があやすんでしょ?』
そう言うと美弥の手などをぷにぷにと遊んでいる。
『わたし…みるけど…なるべくおこさないほうが…』
そう私が言うと姉が、は?と言う顔で私を睨み付けた。
それ以上何も言えなくなってしまった私は黙るしかなかった。
『ふわっ!……ひっく…ひっく…うわーん!!!』
美弥が触られまくっていたせいでビックリして起きてしまった。
『うわー…うるさ!美奈早く泣き止ませろよ』
そう言うと姉は耳を抑えながら私を睨んできた。
『わ…わかった!』
私は急いで美弥をトントンと叩いてみたり、美弥に話かけたり、玩具を使ってあやした。
『みや~ほら、なきやんで~ガラガラだよー』
私は一生懸命美弥を泣き止ませようとした。
それでも美弥は泣き止まなかったけれど一生懸命玩具を降った。
『美奈貸して!』
突然姉が私の手元から玩具を強引に取り上げた。
『美弥~♪ほーら♪』
姉が美弥に話かけていたその時母がバタバタと走りながらかけつけた。
『あらーやっぱり起きちゃったのね…美優が美弥の事ずっとあやしててくれたの??やっぱりお姉ちゃんね♪ありがとう♪』
そう言うと母は美弥を抱き抱えキッチンへと移動した。
そうなのだ、私が頑張ってしたことも姉は人が来る直前になると自分の手柄にしてしまうのもいつもの事だった。
ある日の事姉と妹の3人で追いかけっこしていた。
『美弥、待て待て~』
姉はハイハイで逃げ回る美弥を追いかけていた。
『みや~まてまて~』
私も美弥を追いかけていた。
『あ!あぶない!!おねえちゃん、みやをおいかけちゃダメ!!』
『あ?何でお前に指示されないと…』
次の瞬間ガンッ!!!と物凄い音がした。
一瞬何が起こったかわからなくてシーンと静まり返った次の瞬間
『ギャーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!』
美弥が今までに聞いた事ない声で叫んだ。
その声にビックリして母が駆け付けて来た。
『きゃーーーーーーー美弥!!!!!美弥!!!!どうしたの!?!?!?何があったの!?!?!?!?』
母は半狂乱になりながら美弥を抱き抱え救急車を呼んだ。
美弥は血だらけだった。
救急車が来るまでの間、母に何があったのかを問いただされた。
『何があったの!?!?!?!?どうして美弥が血だらけなの!?!?!?!?』
凄い形相の母を前に私は呆然とするしかなかった。
『美奈が…』
姉がボソッと呟いた。
『え??美奈がどうしたの!?!?』
『美奈が美弥を追いかけてたらガス栓に美弥が当たって口から血が出たの!!!私は止めろって言ったのに聞かなかったの!!!』
そう姉は母に告げた。
『美奈!!!!!!どうして追いかけっこなんてしたの!!!!こんなとこでしたら危ないでしょ!?!?!?!?お姉ちゃんの言う事がなんで聞けないの!?!?!?』
母は私に怒鳴り付けた。
『…ごめんなさい…ごめんなさい…わたしのせいで…みやが……ほんとうにごめんなさい…』
私は謝る事しか出来なかった。
その後、美弥は下顎の所から口の中にまで貫通していたらしく、3針を縫う大怪我をした。