序章
これは、私が歩んできた歴史です。
実際にこう言う事が日常の中で今でも行われていると言う事実を一人でも多くの方に知って欲しいです。
決してドラマだけの話ではないのです…身近にそんな人がいたら、勇気を持って助けてあげて下さい…その人はその時は色々思うかもしれません…でもきっとそんな毎日を送っている方がその人にとって悪影響だと思います。
私の様にならないで一人でも多くの方が助かります様に願いを込めて…。
私は最初姉の奴隷として産まれた。
産声を上げたその日からきっと私は奴隷としての人生を歩む事が決まっていたのだろう…物心ついた時は奴隷としての私が出来上がっていた。
『ジュース持ってきて』
今日も私の姉が当然の様に私に命令してくる。
私も何も抵抗しない。
私にはそれが毎日の日課だからだ。
『はい』
そう短く返事をすると私はキッチンにジュースを注ぎに行った。
私の家は、母と姉と私と妹二人の五人で暮らしている。
私は、次女だ。
母は鬱病で常に布団の中に籠っている。
実質、我が家は姉の天下だ。
『美奈!早く!!』
姉が私を呼ぶ声がする。
早く持って行かないと大変だ。また、体にキズが増える。
私は急いで姉の元へジュースを届ける。
『お姉ちゃん…ゴメン!どっちのジュースかわからなくて…』
『は?私がいつも飲むの決まってんじゃん。そんなんもわからないの?』
『…でも…昨日はスポーツドリンク飲んでたから…』
『は?口答えすんの?』
『え…あ…ゴメンなさい…』
そう言うと姉は私の髪を引っ張る。
『お前はさっさと言われた通りに動いてたらいいのがわからないの?バカなの?あ、ごめーん♪バカだったね♪』
『………痛いよ…気を付けるから…離して…』
そう言うと姉はフンッと鼻を鳴らしながら私を蔑む目で一瞥すると私の髪を離した。
この仕草は何度も見た。
これは、姉が私を蔑む時にするお決まりの仕草だ。
この仕草をされる度、私はバカなのだと思い知らされる。
私を一瞥した姉は私が持ってきたジュースを当然の様に飲みながらゲームを再開した。
私はいつ呼ばれても良いように横で待機した。
すると先程まで上機嫌だった姉の顔が歪んでいく。
まずい…ゲームが難しい場面に差し掛かりなかなかクリアが出来ないのだ。
姉はゲームが得意なのだがどうしても難しい場面は出てくる。
その時は機嫌が悪くなり私達姉妹に当たられる。
段々と顔がイライラを表してきて舌打ちまでしだしている…
まずい…本当にまずい…
これは絶対に当たられる…こう言う時は息も殺してじっとしているのが一番だ。
でも、そう言う時に限って私はタイミングが悪い。
昔からタイミングが悪いと周りの大人から言われていた。
今まさにそのタイミングの悪さが出てしまい、尿意を感じてしまったのだ。
姉はどんどん不機嫌になっている。
まずい…トイレに行きたい…仕方ないからゆっくりと動いた。
すると、
『あ!!死んだ!!!』
姉の声が聞こえた。
まずい…私は急いでトイレに向かおうとした。
だが、遅かった。
次の瞬間姉の平手が飛んできた。
バシッ
いい音が鳴った。
『お前が動いたせいで死んだだろ!!!』
『ごめんなさい…』
あぁやってしまった…わかっていたのに動いたらまずいのがわかっていたのに動いた私のせいだ。
姉はぶつぶつ言いながらゲームの画面に向き直った。
『お姉ちゃん…私のせいで…本当にごめんね…』
そう言うと私は痛い頬を押さえながら急いでトイレへ向かった。
どうして私のせいなの?動くのがそんなにいけないことなの??
でも私が動かなかったら死ななかったし…やっぱりタイミング悪くトイレに行きたくなった私が悪いのかな…
私は沢山の疑問が浮かんでは消えていった。
私は…姉の為に生きている。