ツンデレラへの道2
俺があかりと出逢ってから、まあ大体2週間ほど経った頃。
俺の中で、何か革命が起きつつあった。
「市原君〜!」
とまぁこんな感じであかりが登場するわけで。
「おう」
俺もまぁまぁ今まで通りに反応をするわけだ。
「一緒に食堂行きましょうっ♪」
……百歩譲って、ここまでも一応いつも通りとする。
そして俺たちは1階の食堂に降り、あかりのお気に入りの席をとって、
俺は肉がたっぷりのスタミナA定食、あかりはサンドイッチを持ってくる。
この間にする会話は、前と比較すると著しく盛り上がりを見せていることだろう。
俺は受動的じゃなく、自分からもまぁまぁ話しかけるようになった。
あかりに興味を持ち始めたとかいう訳ではない、単に好みのものの話をされるとノってしまうタチだったのだ。
だから少しは楽しく席に着き、俺は割り箸を割る。
あかりはmy箸とやらを持参し、テーブルの上に置く。
そして昼食が始まる。
最近になると俺たちを物色する者も減り始めていて、若干気楽になってきた。
周りは俺たちを気にかけ、この席を空けておいていてくれる。
なんとまぁ、良い心遣いなことだろう。
京祐曰く、俺目当ての後輩がいるとかで、その子らがキープしてくれているらしい。
…あかりの分もセットされているのは謎だが。
話を戻すとしよう。
問題はここからだった。
「市原君、あ〜ん」
………待て待て待て。
ここのところ俺の悩みを作っているのは、他でもないこの行為だ。
あかりが何のつもりでやっているのかは知れないが、とりあえず俺が困っているのは確かだ。
この声を聞いた時ばかりは周りの生徒たちも振り返る。
「始まった!」と言わんばかりの輝かしい瞳で俺たちを見つめてくる。
俺は…無論無視する。
「市原君っ、その定食じゃ野菜不足ですよ!私のレタスあげますから」
…という理由だそうだ。
あえてサンドイッチの日に箸を持参するのはこのためだ。
俺はやや動揺するが、まあそんな素振りは見せない。
「いいよ、お前喰いなよ」
あかりは引き下がらない。
「駄目です、健全な男子高生がそんな栄養しか摂ってないなんて…
食堂のおばさんが許しても私は認めません!食べなさい、市原君!」
俺はなんでこいつと飯を食いに来ているんだ。
口うるさいだけなのに、慣れだけではない何かに足を引っ張られて来てしまっている。
多分、この間の事件のせいなんだろう。
俺はあかりの箸を避けながら、ぼうっとしつつ彼女の唇を見つめていた。
決して変態やらではないが、あかりの唇は形がいいと思う。
俺も一応は男なので、女に全くの無関心…という訳でも、興味が湧かない訳でもない。
昔は好きな子もちゃんといたし、今は単純に気分にならないだけだ。
だから、「あれとキスしたのか〜」なんて思っていると、不意に
「ぶ」
俺の口にあかりのレタスが炸裂した。
正直このレタス、朝からドレッシングに浸ってたものだから萎え気味だ。
はっきり述べると、かなり不味い。
「………」
やっとのことで口に入ったのが嬉しかったらしくあかりは満面の笑みなので、俺は仕方なく不味いレタスを噛んで飲み込む。
……俺は野菜が嫌いだ。
「…不味い」
ぼそっと聞こえない程度に呟いたつもりが丸聞こえだったらしい、あかりが野菜について語り始めた。
「野菜は本当に大切なんですよ!ビタミン源なんですから!
最近の高校生は好き嫌いが激しいですから、あんまり摂っていない人も多いですけど。
野菜を摂らないとまず体の調子が整いませんし、口内炎や肌荒れにもつながります。
私なんか毎日サラダ食べますよ、にんじんもピーマンも嫌いなのに!」
力説するあかりだが、好き嫌いが多いのはこいつも一緒だ。
トマトやキュウリは食べられるものの、子供がよく残す人参、ピーマン、きのこ、ネギは大の苦手らしい。
きっと今はお手本になりたいとかいう一心なのだろう、俺は、あかりはヤセ我慢しているとみた。
「はいはい、分かったけど。お前もいいから食えよ、ただでさえ無駄に細いんだから」
あかりは標準体型よりやや細身だ。
女子たちから見たら「スレンダー」そのものなのだろうが、俺からみたら、もうちょっと肉付きがよくても良いくらいだ。
「わかりました、食べますよ〜」
そして最近反抗期なあかり。
俺に対して若干対抗したがる。
本来この年頃の女は大抵がそんなものなんだろうけど。
「でも、まずは市原君からという事で!あ〜ん」
………やめて欲しい。
とどのつまり、俺の言いたいことは。
最近の俺は、あかりに流されっぱなしなのである。
同じ箸でモノを口にしているのだから間接キスもしてるわけだし、それに対してさほど抵抗もしていない。
周りからしたら付き合っているようにも見えるだろうけれど、俺はそんなつもりはない。
でも、抵抗がないのだから、俺はあかりと付き合うこと自体に抵抗がないのかも知れない。
そういえば、最近の反抗するあかりを少しからかいたいような気がしないでもない。
この間のキスも不快じゃなかった。
結論。
俺はあかりが、多少なりとも好きになりつつあるのかも知れない。
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