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ちょっとしたゴール

さぁ、ここで問題だ。


今俺が正直焦っている理由、それは何でしょう?




其の1。


文音が突然俺にナイフを突きつけ襲ってきたこと。


其の2。


あかりが、実は武術(?)が得意であったこと。


其の3。


あかりが俺を「ソラ君」「私の彼」なんて言い出した上、急に敬語を捨てたこと。






「なんとか言ったらどうなの!!」


あかりは文音に跨ったまま怒号を飛ばしている。


もはや淑女の面影は無く、今時の女子高生の本性とやら、そのものの姿である。


俺がびびっている理由は3番だ、分かり切っているだろうが。



「う、うるさいよ!重い。どけっつってんのが分かんないの!?」


あかりは全く重くなかった筈だが、比較的華奢(きゃしゃ)な文音には重かったらしい。


…それでもあかりの方が軽いと思うけど。


「そんな言葉が欲しいんじゃない!いいからソラ君に謝りなよ!


謝るまでは何があってもどかないから!」



なんだか今日のあかりは頑固だ。


なんだかな…かなり庇われてる感。


俺は酷く落ち着いている。なんて薄情なんだか。


「うるさいって言ってんでしょ!」


「謝りなさい!」





    「おいお前ら、何騒いでる!!」


丁度その場に、音楽科・小池がやってきた。


『うわ、』


奴は来るなり、俺を一瞥して「ふん」と鼻を鳴らした。


「うぜえっ」


うっかり心の声が漏れる。


いや、別に声に出ても問題ないけど。


「うぜえくない」


ピシャリと返されまた腹が立ったが、小池は何やらそれどころではないらしい。



何しろ、あの礼儀正しくて律儀で短所のなさそうな日向あかりが喧嘩をおっ始めているのだ。


それも、問題児として目をつけられている長崎文音に尻を乗せて。


それも、すごい形相と気迫と暴言。


こんなに男勝りで暴君(体罰はしていないらしいが)で教師とは思えない女でも、無理はないだろう。



「おい、日向!とりあえず降りろ!」


あかりは振り向くこともせず怒鳴り声のままで


「いやです!謝らせるまで絶対に降りません!」


小池の度肝を抜いた。


「いい加減観念して!」


「うっせえ!!」


「お前達!!!」



目の前で女共が叫んでいるのを聞き耳が痛くなるが、


それよりも俺には、何故ここまでの騒ぎをつくったのがあかりなのか…というのが不思議である。




『ソラ君…か』


なんか、変な響きだ。













その後は、しばらくしてから小池が援護を呼び、あかりと文音はそれぞれ連れて行かれ、文音はまだ叱りつけられていたが、


俺はあかりを迎えに担任の田村のところへ向かっていた。


「おい」


堂々と教室の扉を開けてやると、田村と半べそのあかりがこちらを向いた。


「なんだ、市原。


ノックするなり声掛けるなりしろ」


「失礼しまーす」


「遅い」


「失礼しますっ」


「言う速さの問題じゃない」


下らない小話は止め、俺はそっぽを向きながらあかりに言う。


「迎えに来てやったよ。


俺寝たいから、早く帰りたいんだけど」



あかりは、しゅんとして俯く。


田村は何かを察したのか、「もう帰って良い」と言って立ち上がった。


そして教室から出ようとして、去り際に振り返った。


「そうだ、市原。


今回の件では、日向の行動は自己防衛ということにしておく。


お前は、もう少し周りへの配慮とかに気をつけておけよ、


最低でも、女に気遣いなんてさせないようにな」



よけいなお世話だ。


田村は微笑を浮かべると、すぐに真顔に戻って出て行った。



(クソ)田村」


あかりは苦笑いして、目元をこすって「悪い先生じゃありませんよ」と、元の敬語口調で言った。


「あ、お前、敬語」


「ふふ」



一応、俺にだってそれくらい分かってるけど。


でもなんか苛立ちますね、仕方ない。




「あの、市原君」


「あ?」


これまた、呼び方も元に戻っている。


「あの、私。さっきは出しゃばった事なんかして、ごめんなさい。


反省はしてるので。


お詫びにと言ってはなんですが、可能な範囲でしたら、その……」


口ごもる。


なんなんだ、この女は。


「なんだよ、ハッキリ言って」



「え…と……」



こういうのが無ければ、本当に良いヤツなんだが。




「あの、ですね。






こないだの市原君の、告白?を、う、受け取らせて頂こうかと…」


あかりは手をモジモジさせながら、やや俯き気味で言った。









何!!?

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