3話
三話です。
今日もきつかった部活が終わったので、帰ろうと部室を出るといつの間にかもう片方の足にも包帯をつけた制服姿の来夢さんが待っていて、
「い、一緒に帰ろっか、友鬼くん」
ズ、ズキュン。
「そ、そうだね」
これが青春か、青春ばんざーい、リア充ばんざーい。
「まさか、君があの『追憶書店』のお孫さんだったなんて知らなかったな。」
実は俺の家と来夢さんの家は近所であるということが最近わかった。俺は小さい頃に父親がいなくなっていて、母親もその後再婚して俺から離れていった。そして俺は父方のおじいちゃんの家の書店に住まわせてもらっている。
「にしても今日は調子良かったみたいだね。」
「でしょ。今日はたくさん光のパワ、じゃない、いっぱい寝たからね」
これでばれてないとおもってらっしゃるんですか?
「そういえば、今日友鬼くん一年生の女の子助けてたでしょ。朝の公園で。」
そう、今日の朝、登校していると近所の公園で、西州高校の制服を着た女の子が、なんかヤンキー風なにーちゃんに絡まれていて困っていたから、この正義の塊である俺は爽やかに助けようとヤンキーに声をかけたため、襲われてしまい、追っかけられていた。まぁ陸上部の本領を発揮し、すぐ振り切ってやったが。
「あぁ、あれねー。ていうか、来夢さん見てたの?」
「うん。あのヤンキーがいなくなった後、あの女の子と一緒に学校行ったよ。その子、めっちゃ感謝してたよ。…まぁ友鬼くんの名前は教えなかったけどね。」
「よかった~、逃げるとかダッサーって思ってるんかと思ってたよ。ていうかなんで教えないの?」
「いや、なんでもいいじゃーん。」
気づいたらもう来夢さんの家まで着いていた。
「それじゃあ、今日もお疲れさん。また明日ね。」
「えーと、そちらこそ。また明日。」
「ついでに明日は朝練なしでお願い。」
「いやですー。やりますー。」
そういうと来夢さんは少し意地悪な顔をして、家に入っていってしまった。
でもそれにしても来夢さんの家大きいなー。なんでも来夢さんのお父さんは大手企業の社長をやっているんだとか。
少し歩くと古い木造の家で、大きな看板に『本町書店』と書かれている建物がある。
アルバイト募集中の紙が貼られている扉を開けると古い紙の臭いがぷ~んと漂ってくる。
「じいちゃーん、ただいまー。」
と、大きな声で言うと五秒間の沈黙があると、急に二階の扉が開いてじいちゃんがでてきて
「おぉ、友鬼。いい時に帰ってきたなー。早く二階上がってこい」
なんだなんだと急いで二階に上がり、扉を開けるとソファーに女の子が座っていた。
「友鬼、この子が明日からここでアルバイトをしてくれる、笹木 音海ちゃん。こいつはわしの孫の本町 友鬼じゃ」
後ろを向いていた笹木さんはきれいな茶色の髪をふってこちらを向いてきたので
「俺は本町 友鬼です、よろしく。」
「あっ、あっ、私は西高1年の笹木です。よろしくです。」
その子はとても礼儀の正しい子みたいだった。
「先輩はあの朝のお方だったのですか。」
あっ、この子、朝のヤンキーの子だ。
「あー、君朝の子かー。」
少しビックリしていると、彼女は大きな声で
「は、はいっ。そうです。」
と答えた。