聴覚障害者の日常 読み間違い編
聴覚障害のあるアタシと子供たちとのコミュニケーションは、口話だ。
口話というのは、相手の唇の動きを読み取り、内容を理解することだ。
彼らの言わんとすることを予想し、それが外れていなければ円滑にコミュニケーションが図れるのだ。
ただし、知らない固有名詞(彼らの友人や先生ではない何か)になるとお手上げで、人なのかモノなのか読み取れないと、ストーリーの先取りができないために理解度が落ちてしまう。
ごくまれに、口話で意外な面白い間違いをすることがある。
例えば、ムスメとの会話だ。彼女はライトノベルにはまっていて、寝る時間すらも惜しんで読むことに没頭してしまうので、時々、アタシに怒られる。
彼女は我慢をしないので、宿題におわれる平日に、アタシは本を隠してしまう。
そうすると、ムスメはアタシを持ち上げ始める。
『おかあさん、かみのけがながいときもかわいいね。』(わざとひらがな表記です。)
これをアタシは、
『お母さん、髪の毛が長いとキモかわいいね』
と読みとった。
『キモ?!』かみつくアタシ。
『え?なに?』ビビるムスメ。
『キモかわいいって?!』とにらむアタシ。
『そんなこと言ってないよ〜(泣)長いときもかわいいっていったんだよぉ。』と焦るムスメ。
『ほら、また、キモ可愛いっていった!』と噛みつくアタシ。
『長いときも、っていったんだよ、切るとこが違うッ(泣)』と弁解するムスメ。
あ…、なんだ……。
泣き笑いで、ウケまくってるムスメを尻目に、本の在処を教えるまいと思うのだった。