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溜め息

賑やかな声が遠くから聞こえる。

お昼時になると、普段は暗く沈んだ雰囲気の第三音楽室も暖かい空気に包まれるようだ。


「・・・・・・アッキー来ないなぁー」

澄んだ声が退屈そうに呟いた。


さらさらと艶のある黒髪が古ぼけた楽器の間に揺れて見えた。


よく見ると、音が出るかも怪しいような楽器たちの間に美しい少女が寝っ転がっていた。

閉ざされたカーテンの間から差す明るい光が少女の影をつくることはなく、ただ埃にまみれた床を照らすだけである。

「暇だー・・・恭子ちゃんは暇だぞー・・・」

音楽室の幽霊として小さな噂の中心となっている幽霊・草薙恭子ちゃんはものすごく暇を持て余していた。


「・・・・なにしてんの」

購買で買ったパンを片手に、秋人は呆れた目で恭子を見下ろす。

がばっと勢いよく上半身を起こした恭子は、

「アッキーがあまりにも遅いから暇で暇で仕方がなかったんだぞーっ!!」

と拳を振り上げたが、それは秋人の脚を空しくすり抜けた。


「暇って・・・・僕は暇じゃないんですから・・・」

秋人は座り込んでバンをかじる。

「アッキーが暇じゃなくても私は暇なの!!」


「どこのお嬢様だよ」


「女の子は誰でもお姫様になれるのよ!!」


「わがままのレベルがお姫様を超えてるよ」


秋人が溜め息をついた時、外から騒がしい声が聞こえてきた。

途端、秋人が楽器の間に素早く潜り込んだ。

「・・・・アッキー何してんの?」

まるで軍人のように素早く無駄のない動きに恭子は呆気にとられる。

『いいから静かに!!』

人差し指を必死に口に当てて訴える秋人の恐ろしい剣幕に、恭子は大人しく座っていることにした。


ガチャ


扉が開くと同時に、数人の女子生徒のはしゃぐ声が大きく響いた。


「秋人先パーイ・・・・・ってあれ?」


「ほら、ゆったでしょ?こんなとこに先輩が来るわけないって」


「でもさっき見たよ!!あれは絶対秋人先輩だったもん!!」


「見間違いでしょー」


「秋人先輩、何気足速いからすぐ見失っちゃうんだよねー・・・」


「また明日にしよっか?」


「だねー・・」


扉が閉まる音がしたあと、賑やかな声が段々と遠ざかっていき、音楽室は再び静寂に包まれた。




・・・・・・



「・・・・・っはぁーー・・・・」

楽器の下で、秋人が緊張感を押し出すように深い溜め息をついた。


「アッキーってばモッテモテじゃないの~」

恭子がニヤニヤしながら言うと、秋人は苦い顔をする。


「ああやって来られると、すごく目立つしからかわれるから嫌だ」


「あら、乙女心をないがしろにするなんて酷いわ、アッキー」


「その気もないのに優しくするほうが酷いだろ」


「それもそうね」


カラカラと笑う恭子。

もう隠れる必要はないのだが、二人はしばらくの間楽器と楽器の間に挟まっていた。

カーテンの隙間からは青空が覗いている。



「・・・・・はぁー・・・」



秋人はもう一度深い溜め息をついた。

アッキーは意外と人気があるようです。


王道ですね!いいじゃないか王道!!

一話一話が短いのはご愛きょ((ry

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