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檻城(おりじろ)の姫君 ━━檻の城で、自由を夢見た姫君━━  作者: うさぎさん⭐︎
第二章 賞金稼ぎ

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第一話 「追っ手」



 明け方。緊急サイレンに、翔は起こされた。部屋を出ると、隣の部屋からちょうどフライも出てきたところだった。

 お魚柄のパジャマを着ていて三つ編みはほどいていた。

 翔はシャツとズボン。風呂の脱衣所兼洗面所に着替えが出てくるマシーンがあって、それを有り難く使わせてもらっていた。

 洗濯機もあったし、脱いだ服を入れるかごもあった。全自動洗濯・乾燥・アイロン・折り畳みマシーンもあったが、洗濯ロボットもいた。翔は洗濯マシーンのほうを使った。丸めた背服もそのマシーンで洗ってみた。 

 綺麗に畳まれたそれらの服は、翔の部屋のナイトテーブルに上に置いてある。

「なんなんだ、一体!」

 外していた猫ピアスをつけて、翔は喚いた。

「追っ手よ! もう追いついてきたみたい!」

 翔たちが言い争いしているときも、食事してるときも、寝てるときも、お魚はひたすら宇宙を泳いでいた。フライの星から逃げていた。でも、後ろから小魚よろしくやってきた真ん丸の巡洋艦五隻にもうすぐ追いつかれそうである。

「あー、やっぱ生活と攻守重視の大型船じゃなくて、スピード重視の船にするんだった!」

 ブリッジへ走る二人。

「どうするんだよ!」

「大丈夫、この船、戦闘もできるから! 結構すごい砲撃ができるはずよ! 赤い矢のようなレーザーの奴でね、赤龍砲っていうの! えーと、そうだ、翔、銃! 銃持ってきた?」

 王城脱出時にフライに渡された銃は、このお魚内の翔の部屋のショルダーバッグの中で眠っている。

「持ってない!」

「あははー私も忘れてきちゃったー。まーいーかーブリッジとかにもなんかあるだろーし。まさかいきなり白兵戦にはならないだろーし。こっちには、奥の手もあるもんねっ!」

「奥の手……?」

 とかなんとか言っているうちにブリッジについた。ちょうど通信が入る。 

 オートメーションで空中スクリーンが現れ、そこに映像が浮かぶ。どっかで見たようなシャム猫。……翔をさらった猫のうちの一匹だ!

「姫様っ⁈  これはどういうことですかっ⁈」

 フライは妙に硬い声で言い返した。

「見てのとおりです」

「見てのとおり⁈ じゃあ、やっぱりそこの地球人にかどわかされてんですね⁈」

「違う。彼は関係ない。私の一存です」

「そんなっ! 信じられませんっ‼︎ あんなに大人しくてまじめで、そこの地球人を連れてこいなんて━━願いを初めて口にしたような姫様がっそんなっ‼︎ フライ様は騙されていらっしゃるのです!」

「違うといっている」

「城の騒ぎはなんとかごまかしました‼︎ まだお父上もお母上もマイティ様も、このことを知りません! 今ならまだ間に合います! そんな宇宙人の言葉、耳を貸しては……」

「黙りなさい! いくらなんでも追いつくのが早すぎます。どういうことですか⁈」

「あっ、それだったら、実はそこの奴のピアスを作ったとき、密かに発信機能をつけてみたんですね、私が! お手柄でしょう?」

 シャム猫は自慢げに言う。こいつ、どうやら科学者とかメカニックとかそっち系らしい。……でも、どっかばかそうだ。

「チッ」

 フライは舌打ちした。翻訳機の代わりは手元にはない。あれは実はすごい物なのだ。

「しかたない。ねー、お魚号(仮名)! なんかさー、ピストルとかナイフとかなーい?」

 お魚号(仮名)は、ブリッジの壁にあるドアを一つ開けた。なぜかそこは倉庫だった。

「あ、そうか。ブリッジの側に使えるもん置いとくといいいかなーって、倉庫造らせたんだっけ。翔、悪いけど、何か武器持ってきてくれる?」

 翔は、小型銃と、大型ナイフを持ってきた。

「姫様? 何をなさるおつもりで?」

「うふふふふ」

 フライは笑った。目が爛々(らんらん)と輝いている。

「翔。じゃあさっ、その銃とナイフ、私に突きつけてくれる?」

「いっ⁉︎」

 翔はフライの正気を疑った。どっかのネジが数本ぶっ飛んでるんじゃないかと不安になった。

 だって、フライの目はマジなのだ。しかも、すっげー楽しそう。

「なに言ってるんだよ、フライ⁈」

「姫様⁈」

「翔、早くして!」

 フライの目が危なく光った。

 なんかこのままじゃ爪で引っかかれそうだ。

「早く!」

「…………ハイ」

 翔は負けた。言われたとおりにした。

 もちろん、フライを傷つけないよう間隔を開けて彼女に武器を近づける。

「なっ⁈」

 慌てたのはシャム猫だ。

「なななななにを⁈」

「私の命が惜しかったら、引き下げなさい」

「なななな⁈」

 もちろん翔も慌てていた。クールなのはフライだけである。

「貴様っ! なんて卑怯なんだっ‼︎」

 シャム猫はスクリーンを破りそうなくらい指を突きつけてきた。━━翔に。

 そして、数分後。シャム猫の船とかは本当に引き下げていった。笑っちゃうくらいあっけなかった。

「きゃー‼︎ やったー‼︎」

 飛び跳ねるフライ姫様。翔はもう武器を下に捨てていた。…………怖かったのだ。いつ自分がキレて彼女を本当に殺めやしないか、翔は怖くてたまらなかったのだ。

「快感ー♪ ねーねー見た見たアイツの顔?」

 翔は掠れた声を出した。

「なんで俺にあんなことさせるんだよ。俺が本当にあんたを殺すとか思わなかったのか」

 自分はフライに恨みがあるのだ。二度と地球に帰れなくなるかもしれなくなったその元凶に。

「なんで? 翔はそんなことしないよ♪」

「……脅しなら、自分で自分に武器を向ければよかっただろ」

「そっか。その手もあったね」

「……」

「翔? どうしたの? 泣いてるの……?」

 翔はフライを抱き締めた。彼は震えていた。

「本当に死ぬなんて絶対そんなのだめだぞ」

「うん。わかった。ごめんね……翔」


 その後も追っ手はやってきた。だが、ばかのひとつ覚えみたいにフライが自分で自分に武器を突きつける度に猫たちは慌てふためいて、今にも自殺しようとしている人を説得するかのように(実際ヤツらはそんなふうに思ってる)、有り難ぁーい説得を試みてくれた。

 だが、馬の耳に念仏。フライの耳に説得。なんの役にも立たないのだ。

 ギャグみたいに尻尾を巻いて逃げていく猫たちを見て、翔は思った。あーばかだ、猫ってばかだ、ここの猫ってばかだー。

 そのうちフライのお母さんとか連れてきて、「君のお母さんは泣いてるぞー」とかやってくれるかもしれない。 

 でも、こりずにがんばる猫たちは、なんか気の毒な気もする。

 ━━翔は一つ確信した。フライは人質の価値大有り━━ありすぎるくらいだと。本当にフライを盾にとって、「地球に返しやがれ。こんちくしょう」とかやったら、地球に戻れて大ハッピーかもしれない。

 ……いや、無理かもしれない。だって、もし遥か地球までフライを盾にして帰れたとしても、自分がフライから離れた瞬間狙撃されるかもしれない。

 家族とか友人まで巻き添えにされるかもしれない。

 一生フライを人質のままにてもいけないし……。いや、それ以前に、地球につく前にどっかでミスしてあの世の住人になってしまう可能性だってあろ。

 もちろん本当にフライを傷つけるなんてのは論外である。そんあことをすればマジで翔の命はない。そう。なぜかいつもいつも猫たちは翔を悪者にするのである。

「貴様、姫様に無理やりそんなむごいことをさせやがって!」 

 とか、

「てめー、見てろよ、今に殺してやる!」

 とか……。怒りに瞳を燃えさせ。

 あれはすでに憎悪入ってるかも……。フライのお母さんじゃなくて、翔の母を連れてきて説得━━とかいうのは無理そうだ。逆に母とか人質にされて「フライ様を返しやがれタコ」とかのがありそう。

 あぁ誰かフライを止め下さい。ばかなことやめさせて下さい。

 でもたとえフライが城に戻っても、自分は殺されそうである。フライがだめといってもイッちゃった猫とかにすぐ殺られちまいそうである……。

 __溜め息は止まらない。悩みはつきない。悪夢は終わらない……。




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