第四話 「戦慄──逃げ場なき緊急通信」
横一列に並んだクラビー・シラー・プトレーへ向け、対ドラゴン艦隊は、射撃を開始。虹色のレーザー=レザリアムは、サメのように、どこまでだってドラゴンを追尾する。狙った獲物を逃がす気は、今のマイティにはない。ただし、マイティはかなり余裕をかましていた。少ししかへ<溜め>ずに攻撃していた。
「ばかなドラゴンマスター」
自分から死にに来るなんてね。
「はっきり言って、てめ~に勝ち目はねえよ」
マイティは、おいしいお魚でも眼の前にしたように、舌なめずりをする。赤い舌。妙に艶めく動作。メス猫が見たらとんでもないことになっちゃいそうなくらいセクシー。
「そうだな、僕がもしドラゴンマスターだったら、人質を取るね。一番いいのは、王と王妃。ドラゴンの移動力なら、追いつけるよね」
レザリアムは、三匹の子竜を追いかけていく。サメ型船はわざと焦らして、レザリアムをあまり打ち込まない。射撃数を少なくしている。どこまでも、別方向に逃げていく赤と蒼の二竜。━━子竜のくせに、結構素速い。
「やばいかな。ばか正直な猫なら、人質なんか取らないかな? あんな王たちも、星民には愛されてるしね」
フライたちはそれっぽいことしてたけど。
ライズの長距離レーダーが、逃げ惑うドラゴンたちを捕らえている。王と、王妃の乗ってる船をレーダー上に譲別標示させる。色は、金色。どうやらマウラへ向かっているようだ。ドラゴンは、それぞれ、赤、蒼、紫で標示している。フライの船の標示は銀。ドラゴンマスターはとりあえず、白。あとの逃げていく猫の船は、必要に応じて標示。とりあえず、猫が多く固まってるとこだけ、緑で標示。
ばか猫どもは、その辺からあまり動かない。見物しているらしい。━━逃げろよな。
「先に、マスターを殺っちまおうかな。楽しくないけど。フライのこともあるしね。でも、奴らを倒したあとでフライを追っても、全然間に合うな。どうしようかな......? とりあえず、マスターと話でもしてみようかな。ばか正直な猫かどうか......。でも、わざと最後の最後で通信入れたほうがかっこいいかな?」
ライズ以下のサメ型船は、場合に応じて、手動・自動を切り替え、操作している。ドラゴン一匹につき、サメ型船二隻でマークする。サメ型船のレーダー標示は虹色。ワープを繰り返し、ドラゴンの前後左右に現れ、いたぶるように間を持たせ、レザリアムを打ち込んでいる。一匹、紫竜だけはマスターを守るためか、ライズ狙いか、ライズの前から動かない。ライズも動かず、戦闘を見物している。もちろん、紫竜ともサメ型二隻が相手をしているので問題はない。対するドラゴンはそれを可能な限り避けつつ、ブレス・テイル・ダイブアタックなどで応戦。あれだけドラゴンが暴れていれば、その辺の小惑星とかがいくつも破壊されているだろう。化け物め━━。優しいマイティも文明のない星屑とかの心配はしてらんない。
「これじゃあつまんないな。何度もこの船でドラゴンに対抗するため演習した、シミュレーションとあんま変わらない。画面の点を操作するなんて、子供騙しのゲームだよね。案外、始めてみるとつまらないや。子竜でももう少し強いかと思ったのに。がっかりだ。もうちょっと楽しませろよ、ドラゴンマスター」
これじゃあ、すぐに子竜なんかやっつけちまう。弱すぎる。マイティは<溜め>をほとんどやめた。でも、これでもそのうちやっつけちゃいそう。━━レーダー上の、遠ざかる赤と蒼を、虹色にきらめく四点が追っている。
「......もしかして、誘導かな?」
親ドラゴンが隠れてるとか。━━まさかね。それはヤバイ。
「単に逃げてるだけか……。フライたちから引き離しているのか。それか、ここから逃げていってる猫たちやなんかから、僕たちを離して、そいつらを巻き込まないようにしてるのかもね。ほんとは、紫のも動きたいけど、僕がここにいるから、まだ動けないとか……? レザリアムはドラゴンにしか撃てないけど、ドラゴンには攻撃対象なんて関係ない……。おいおい、もしかして、優しいドラゴンマスター……だったりしてね……?」
フルネリウス。アイツは、残酷なドラゴンマスターだ。情じられないくらいの数の猫を殺して、嗤っていたらしい。泣くほど嗤っていたらしい。
━━ばかなのは猫たちのほうだ。なんで、レザリアムをドラゴンにしかぶち込めないようにしたんだ。そのプログラムはマイティでも変えられない。もしかしたら、解除法があるのかもしれないが、そんなもの見つけられなかった。
ネズミの兵士たちを殺れとか、一般の奴らを殺せとか、そんなことは言わない。猫たちはきっと、七竜を倒せば戦争は終わるから、他のネズミたちを巻き込みたくなかったのだろう。同胞をたくさん殺されたくせに━━。
悔しくなかったのか? 恨まなかったのか? ......殺ればやればよかったんだ。フルネリウスだけは。
ドラゴンマスターにもレザリアムを打ち込めるようにすればよかったんだ。
フルネリウスだけは許せない、そう思ったはずだろ?
フルネリウスを殺せば、戦争は終わったはずだろ?
そうすれば、猫たちは負けなかった。それとも、フルネリウスを殺すことにより、ドラゴンたちの報復を恐れたのか? 記録によると、フルネリウスは憎むべき存在だ。
詳細はわからないが、すべての元凶らしい。
戦争の原因も彼が作ったと書いてあった。嘘かもしれないが。フルネリウスを恨んだ猫が、誇張しまくって書いたのかもしれないが。フルネリウスはモンスターだとまで書いてあった。こんな奴に、七竜だって、どういう理由かは知らんが、使役されたくはなさそうだが。ひどいことすんの、僕ならやだし。でも、ドラゴンは凶暴だから、単に暴れたかっただけかも。フルネリウスは本当に残酷なマスターだったのか? ━━それとも、竜たちと信頼関係があったのかな? そうなのかな? そうかもな。じゃなきゃ、言うこと聞かんかな? 無理やり使役するなんてそれこそ化け物。フルネリウスって、もしかしたら案外いい奴か? 猫をたくさん殺したけど、猫の星は破壊しなかった。いや、それだけの戦力と知恵がなかった?
━━七竜。
できたかも! キャトラ壊すのできたかもっ‼︎ なのにやんなかった?
でも、あいつらは猫を一杯殺したじゃないか。そうだろ? その脅威を示せば、姿見ただけでも、さすがにばか猫どもでも降伏して、七竜と戦う前に戦争終わったろ?
いや、違う。戦争の最初は、猫のが勝ってた? 七竜が現れたのは、終わりのほうだ。ドラゴン側は、降伏しろといった? ドラゴンは脅威━━バトルなしで、戦争終了と睨んだ? でも、ばか猫どもが、引かなかった? 無謀な戦を挑んだ? ドラゴン側は、殺したくないのに、殺さないといけなくなった? それでもネズミの星を攻撃しようとする猫たちから、ネズミの星を守るためため━━? だって、七竜なら、キャトラ壊せたんじゃ? なぜ、対ドラゴン艦隊を造る余裕すら与えた?もしかして、攻めなかった?七竜は、ネズミの星を守ってただけ?
それでも、ばか猫どもがレザリアムまで使って攻めてきて、争わなくちゃいけなくて……。ばか猫たちはそれで絶対七竜倒せると余裕ぶっこいて、レザリアムはドラゴンにしか撃てなくして、ドラゴン殺っちゃえば、もうネズミなんか怖くないと余裕こいて、逆に殺られた?
ばか猫。キレてもばか猫。科学力すごくてもばか猫。戦争なんかしたばか猫。
元々戦争挑んだのも、もしかして、ばか猫のほう━━?
━━<優しいドラゴン>。
しかたなく、ネズミの星を守りつつ、防御やよけることばかりしてた七竜たち。でも、戦争の動乱で、あーなって……。もしかしたら、ばかネズミどもは戦えといったけど、ドラゴンたちは防神とかばかりして……。でも、猫たちは弱すぎて、ネズミの星へ向かうのを阻止しようとしたら、猫たちの宇宙船が、七竜のボディに当たったりとかして、倒したくないのに一杯一杯倒しちゃって。
━━<優しいドラゴンマスター>。
でも、ばか猫たちが、七竜倒すため、対ドラゴン艦隊を造った。あの禁書にこう書いてあった。
<虹色の七竜>。本当に虹色の竜が七匹いたのかもしれないが、マイティはこう考えた。それぞれ色(種類)の違う竜が七匹。
ライズらの船に、赤・蒼・紫の三竜の戦闘能力等のデータはあった
。マイティがあの三色の子竜に勝てると思ったのは、シミュレーションで、ライズら七隻であの三色の親竜にもなんとか勝てたからだ。子竜のデータはなかったが━━子竜ならきっと勝てるはず。━━でも、他の四色の竜の戦闘力等のデータはない。けど、みんなたぶん例の三竜より強かった。あるいは、強いのが何匹かいた。だって、猫は結局は四匹の竜しか倒せなかった。猫たちはたぶん、赤と蒼と紫の竜のデータだけで動いてばかやった。
せいぜい、その中で一番強い紫竜七匹を想定しての演習機能しか、サメ型船にはない(もしかしたら、他のデータ消えちゃっただけとか、マイティが機能使いこなせてないだけとかかもしれんが)。データの正確さは不明だが、それなら演習によると紫竜七匹に勝てるのだ。もちろん、七隻じゃ倒せない。三十隻。演習最大友軍艦数三十隻なら、ちょっと余裕で倒せた。こんな船、三十隻も造ったなんて、一体どうやったんだ⁈ 恐るべし、古代キャトラ‼︎ でも、もつと恐ろしいのは七竜だ‼︎
━━ドラゴンVS対ドラゴン艦隊。ラスト・バトル。
━━<優しいドラゴンマスターと、優しいドラゴンの倍頼関係>。
ま、ま、まさかね……。
ところで、急にマルテイは気づいたが、子竜殺したら来ないだろうか? 報復に━━親竜。
それはまずい! 親三匹くらいなら七隻でも倒せるけど……一杯来たら? 子が三匹なら親も三匹? 両親二匹ずつで六匹?
友人や親戚も「てめ~よくも〇〇ちゃんを‼︎」ってきたら? そもそもドラゴンって、オスメス二匹の両親で、友人とか親戚一杯いるのかどうかわからんが。古文書とかには<親竜>と書かれている。<大人の竜>じゃな<親竜>。やっぱ子供産むから? 小さいのは、<子竜>だし。……ドラゴンは謎。ドラゴンマスターを倒せば━━そいつの連れているドラゴンを倒せば、それでバトル終わるわけじゃないのか? 愛があるのか? 復讐心があるのか⁈ ドラゴンって━━。
━━復讐劇。マイティは息を飲んだ。唾も飲み込んだ。それは嫌だ。怖い。哀しい。もし大群で(百匹とか‼︎ ……いんのか?)来て、それこそキャトラ壊されたら? フライ殺されたら? なんでそんなことに気づかなかった⁈ 自分もやっぱりばか猫⁈ だって、ドラゴンは凶暴だろ? マスターも凶暴だろ? 復讐なんてすんの? いや、復讐+凶暴だったりしたら⁈凶暴で復讐劇で優しくてばかでマスターで……あぁ、何がなんだか⁈
「ふふん。そろそろ私自ら動くか」
とかいって、本格的にバトル始めて、瞬間移動かっこよくしまくって、 レザリアムぶっ放して、超クールな悪役っぽく活躍しまくるつもりだったマイティは、もう、パニック。
チクショー余裕ぶっこいてる場合じゃなかった‼︎ もしこれで復讐劇始まっちゃったらどうする⁈ 僕が悲劇の元凶⁈ フライはフライは、僕はどうなる⁈
よ━━余裕は悪役の身を滅ぼすんだっ‼︎ なんで僕こんなに余裕かましちゃったんだ⁈ そうだ、絶対勝てると思っちゃったんだ! それじゃ、フルネリウスに殺られたばか猫たちと一緒じゃん⁈
━━予定変更っ!
「通信だっ‼︎ ライズ‼︎ あのドラゴンマスターの三角船に、超特急で通信入れろっっ‼︎」




