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檻城(おりじろ)の姫君 ━━檻の城で、自由を夢見た姫君━━  作者: うさぎさん⭐︎
第五章 ドラゴン

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第三話 「誰かを生かすために──ドラゴンとの誓い」



 師匠は教えてくれた。太古の猫とネズミの争い。

 なぜ、師匠がそのことを知っているのか、師匠は教えてくれなかった。代々のドラゴンマスターに語り継がれていて、それで師匠が知っているだけのことなのかもしれない。

 でも、カナルはもしかしたら……と、思っていた。師匠自身が、その時のドラゴンマスターなのではないかと。

 ━━師匠のあのゼンマイはすごい。初めて会った日、師匠が巻いてくれというから、カナルがそれを巻いてみたら、今にも壊れそうだった師匠の灰色のボディが、新品みたいに輝きだした。でも、カナルはなんとなくそのままじいさんとか師匠と呼んでいる。あれなら、気の遠くなるほど長い時を生きることも可能かもしれない━━。 

 師匠は自分を<元ドラゴンマスター>といった。でも、師匠ならきっと現役でもそれをやっていける。

 ……たぶん、師匠は疲れたのだ。猫とネズミの争いの話はすごすぎた。聞いていて、涙が出た。じいさんも泣いていた。ドラゴンマスターは猫をたくさん殺しすぎた。

 彼は最初、兵士としてマウラで地上戦闘をさせられた。宇宙でも猫の通常艦隊や対ドラゴン艦隊を一杯映壊した。昔から科学にけていた猫。でもどっかばかな猫。

 マウラにも科学力がある。ネズミたちも宇宙船に乗る。でも、科学では猫のほうが上。猫はネズミに対して、ひどいことをたくさんした。ネズミもひどいことを猫にたくさんした。どうして、ネズミと猫が戦争なんかしたのかはカナルにはわからない。じいさんは何も言わなかった。

 もしかしたら、わざと言わなかったのかもしれないし、じいさんにもわからないのかもしれない。理由なんてどうでもいいものなのかもしれない。だって、戦争に理由はない。正当な理由なんてあるわけがない。

 猫の宇宙船には自動操縦オートメーション機能があった。ネズミ側にはその時はまだそんな物はなかった。ネズミは一杯殺された。猫の船にも一匹も猫が乗っていないなんてのはまずなかったらしいが……。

 ……じいさんは疲れた。殺しすぎた。だから、たぶんやめたのだ。今はもうただのミミちゃんショップの店長。

 彼がドラゴンと友だちになったのは、偶然だった。彼は冒険者だった。誰も見たことない星を探すチャレンジャーだった。そして、彼は偶然にドラゴンと会った。蒼き竜。コスモドラゴン。ドラゴンを見つけてびびっているじいさんにドラゴンがテレパシーで言った。

『友だちになって』

 彼が優しいから? 長生きだから? 攻撃しないから? 理由はわからないけど、とにかくドラゴンはそういった。

 そして、彼らは友だちになった。

 彼らはそれから実際に会うことはなかったが、何度もテレパシーで会話した。親友になった。じいさんはその後いろんな所を旅して、マウラに帰ってきた。そして━━、戦争が始まった。彼を助けるために、友だちのために━━ドラゴンは仲間のドラゴンを連れて、来てくれた。自ら戦争の道具になってくれたのだ。

 ドラゴンが凶暴といわれているのは嘘だ。ドラゴンマスターというのも、最初は戦争中の彼を見て、他の誰かがつけた名。でも、彼は自らその名を名乗るようになる。彼はまるでしもべのように、友だちを使ってしまったから。

 結局、戦争にはネズミが勝った。そして、ミミちゃんがマウラへ平和の使者として送られた。猫の伝説の永遠のアイドル・ミミちゃん。死んだ今でも、猫の星には彼女の映像が残っている。すごくかわいい。耳と尻尾が黄色くて、後は真っ白なミミちゃん。目は緑。猫なら誰でもその姿を知っているけど、詳しいことは誰も知らない。永遠のアイドルのミミちゃん。

 ネズミ側からも、ネズくんが猫の星へ送られた。ネズくんもやっぱり、今ではネズミの星の正体不明なアイドル。かわいそうなミミちゃんは、<ドラゴンマスターの奥さん>にさせられた。その時はもう、じいさんはドラゴンマスターをやめていた。戦争は彼を深く傷つけた。戦争のあと、じいさんはドラゴンの声すら聞こえなくなった。

 ミミちゃんは優しすぎる猫。

 一体きり、心を閉ざして、仙人みたい。廃人みたい。そんな彼をミミちゃんは愛してくれた。助けてくれた。形だけの夫婦ではなく、二匹は心の底から愛し合った。

 彼は、彼女のおかげで、ドラゴンとも再び話せるようになった。そして彼は、彼女をドラゴンに紹介した。テレパシーでドラゴンと話せるようになった彼女は、ドラゴンと友だちになった。ドラゴンの友だちのドラゴンとも友だちになった。争いなんか関係ない。しもべなんかじゃない。彼女はドラゴンと友だちになった。

 じいさんも最初は……本当は、そうだった。彼女はじいさんとドラゴンたちの心を癒した。……でも、彼女は死んでしまった。ロボツトのじいさんとドラゴンたちを残して━━。

 じいさんは、その時のドラゴンマスターのことを自分だとは言わなかった。でも、カナルにはわかった。それが彼自身のことだったと。目を見たら、わかった。涙を見たらわかった。

 だから、じいさんは彼女が死んだあと、ミミちゃんショップの店長になった。もう誰も知らない。じいさんは<元ドラゴンマスター>。

 竜。星竜。宇宙竜コスモドラゴンとダブルが。神竜。呼び方はいろいろ。生態系等は不明。一説によると星を食す。宇宙は昔、星で溢れていたが、彼らがたくさん食べてしまったという。気が遠くなるような時が経たないと、腹が空かないという説もある。だから、まだ星が残っているのだと。

 しかし、彼らが再び空腹を感じたら、猫の星も食われてしまうとか。あるいは、小食または何も食さないとか━━。詳しいことははじいさんも知ちないらしい。細かいことを気にしないじいさんは、そういうことは訊かないのかもしれない。聞いても理解できそいのかもしれない。

 でも彼らは友だちだ。

 カナルも本当はドラゴンたちがどこにいるのかは知らない。まだカナルも知らないけど、ネズミの星の伝説に、三竜は比較的ネズミの星に近い宙域のどこかに棲息しているというものがある。

 フライも知らない、マイナーな伝説。誰もじていないような伝説。そして、残りの竜たち(アルテマとかコロナとか。その二竜の名前以外の詳細不明)は、宇宙の果てに棲んでいるとか。または、どこかの超巨星に棲んでいるとか。

 ドラゴンはとても不思議。猫の頭じゃわからないことだらけだ。猫が、自分の家の裏の、石の下の虫たちのことを気にかけないように、虫が、猫のことなんか考えられないように、ドラゴンにはこんな星、目にも入らないのかもしれない。

 猫が歩いただけで気づかずに小さな虫を踏み殺すように、ある日、ドラゴンも猫を踏み殺すかもしれない。気づかず、星ごと踏み潰すかもしれない。たまたま今は、猫の星は助かっているだけなのかもしれない。

 そんなスケールの、とても大きな世界が、この宇宙には広がっているのかもしれない。いや、ドラゴンなんか小動物で、もっと大きな生物がこの宇宙にはいるのかもしれない。宇宙は謎に満ちている。誰もまだ果てを見ていない。

 ━━じいさんは言い間違いをした。

「ドラゴンマスターにならんか」

 本当は、こういう意味だった。

「ドラゴンと友だちにならんか」

 複雑な心理がそう言わせた。もしかしたら、何かを狙っていったのかもしれないが、たぶん言いたくてもそう言えなかったのだ。彼が<元ドラゴンマスター>だから。

 じいさんはたぶん嫌っている。今でも、自分を。

 だから、たとえ元をつけても、自分をドラゴンマスターという。昔ドラゴンを戦争に使ってしまった愚か者。たぶん、そういう意味を込めて。

 カナルは考えた。<ドラゴンフレンド>。じいさんは、<ドラゴンを無理やりしもベ━━戦争の道具━━にした愚かなあるじ気取り>=<ドラゴンマスター>ではない。<ドラゴンを愛し、ドラゴンからも愛される本当の友だち>=<ドラゴンフレンド>だ。

 カナルはまだドラゴンと<本当の友だち>にはなっていない。だからまだドラゴンフレンドとは言えない。無邪気な子竜たちがちょっと懐いてくれただけ。だからドラゴンフレンドではない。だから、カナルはフライたちにこう言った。

「ドラゴンマスターになった」と。

「ドラゴンと友だちになった。まだ、本当の友だちじゃないけど」

 そういう意味だった。

 <誰かを生かせるドラゴンフレンド>。

 そんなふうになりたい。

 じいさんは、子竜たちにカナルを紹介してくれた。そして、カナルたちはテレパシーを重ねた。カナルはもちろん子竜たちを大好きになった。━━かわいい子供たち。 

 ドラゴンは宇宙の迷い子。心が迷い子。猫と同じ。ネズミと同じ。友だちが欲しい。自分をわかってくれる存在が欲しい。優しさが欲しい。ドラゴンと話をするのなんて、実はとても簡単だ。優しさがあればいい。思いやりがあればいい。

 ━━まず、こう呼びかける。「おはよう」。「こんにちは」。「こんばんは」。簡単な挨拶だ。初めての時は、「はじめまして」でもいい。とにかく、自分の心を偽ってはいけない。そんなこと、頭のいいドラゴンたちはすぐに気づく。

 理屈はいらない。「大好きだよ」 そう言って。「私も、あなたが大好き」 そんなふうに言葉を返してもらえたら。言葉よりも愛を感じたら。言葉なんていらないくらい愛したら。愛し合えたら、それがドラゴンフレンド。それはまるで、フライを見るときの優しい瞳。フライが翔を見るときの愛しき瞳。この宇宙で一番輝く星のように。この宇宙そのものように、温かな何か。 

 カナルは呼びかける。優しい気持ちで。ドラゴンは応える、同じ気持ちで。友だちだから。助けてくれる。助け合う。

 ━━じいさん。あんた元から、ドラゴンマスターなんかじゃないよ。友だちだから、ドラゴンは戦ってくれたのだから。最初から、あんた、ドラゴンフレンドだよ。 

 ━━ぼくもじいさんみたいになれる……?

 子竜たち。彼らはぼくのわがままを利いてくれた。ぼくの大切な人や猫を助けたいと言ったら、やってきてくれた。優しい子供たち。

 もしかしたら、もうすぐ、本当の友だちになれるかな? それとも、もう、友だち……? 

 じいさんは冒険者。つい先程、また旅に出るといってネズミの星から出ていった。 

 店はしばらく休業するので、好きなグッズを持っていっていいといってくれた。カナルはミミちゃん人形を一つもらった。猫の星にいる妹に送ろうと思う。でも、たぶん、しばらく星には戻れない。だって、ぼくは今日からたぶんお尋ね者だ。

 賞金稼ぎがお尋ね者になるなんて、笑える。

 でも、それは大好きな翔とフライ様のためだから……。

 親竜までは来てくれなかった。本当は、親竜たちにも来て欲しかったけど、強制なんかできるわけないしたくない。

 じいさんが頼めば来てくれたかもしれないが、それは酷なことだ。じいさんはもう二度とドラゴンに戦闘をさせようとはしないだろう。親竜たちは子竜たちを心配しているだろう。でも、親竜たちは子供の自主性を重んじるらしい。━━止めはしなかった。 

 じいさんは、どうしてぼくにドラゴンと友だちになってみないかなんていったのだろう? ほくが大事な人や猫を<生かし>に行くといったら、じいさんは笑っていた。不思議な笑みだった。じいさんはどこか神様みたいなネズミだ。カナルにドラゴンと友だちにならないか? とは言ったけど、強制はしない。親竜を説得するなどして、自ら手を貸してくれることもない。

 じいさんは不思議。あのゼンマイも不思議。ネズミの科学であんな物を造れただろうか? もしかしたら、師匠は猫が造ったネズミ型ロボット? まさかね……。   

 ━━カナルに死ぬ気はない。子竜たちを殺させる気もない。

「誰かを生かすドラゴンマスターになれ」

 じいさんは言った。

「自分を生かすドラゴンマスターになれ」

 そうとも言った。

 ━━真剣な目をしてた。あったかな目をしてた。じいさんが大好き。ドラゴンたちが大好き。翔と、フライ様が大好き。 

 だから、少しでも、役に立てるよう━━。 

 それが、時間稼ぎに過ぎなくても━━。 


 翔は、まだ半信半疑だった。カナルが逃げろというから、ユウゾウに逃げるように言って、現在進行形で逃げている。エイムたちにも逃げるように言った。━━でも、どうしてもまだ、あのドラゴンたちがやられるなんて━━ドラゴンに比べてあんなにも小さな船にやられるなんて、信じ切れない━━。

 だって、それじゃあまるで解けないパズル。出口のない迷路。ゲームバランス悪すぎて、いくらレベル上げしても絶対ラスボス倒せないゲームのようじゃないか。

 しかし、あのカナルが、ドラゴンマスター。猫って、変わるもんである。あの、翔一人殺せなかったカナルが……。 

 しかしホント、猫ってすげー。あんなドラゴン操っちゃうなんて。そういえば、ドラゴンライダーなんてのもゲームにはいたな……。あぁ、なんかもう世の中って、こんな広い宇宙って、なんでもありだ。やっぱり、こんなの倒すなんて無理だろう。カナルの奴心配性だなぁ……。

 それにしてもすごい‼︎ カナルを敵に回さなくて、本当によかったっ‼︎ なんかアイツ、ゲームのヒーローみたい‼︎  

 もしかしたら、このままフライと二人、本当に宇宙の果てにだって行けるかもしんないっ‼︎ 

 ……とか翔は思っていた。舞い上がっていた。翔はまだ知らない。カナルの決意の程を。マイティに挑むとはどういうことなのか……。

 あの三匹の子竜で、あのサメ型船七隻に挑むのがどれほど無謀か。 

 ピンクの猫との通信はもう切っていた。そんなことより、ドラゴンだよ。ドラゴンっ‼︎ 


 レザリアム発射。

 対七竜砲。あるいは、単に七竜砲。ドラゴンバスター。ドラゴンキラー。ドラゴンスレイヤー。とにかく、ドラゴンへ向けて発射するレーザー砲である。

 ネズミと猫のファイナルバトルは、ドラゴンVS対ドラゴン艦隊。それで、勝敗を決することとなった。結局、負けたのは猫だけど、いい線まではいった。猫はネズミを一杯殺したけど、レザリアムは、ドラゴンにしか使わなかった。ネズミには黒竜砲とかを使ってた。それでも、十分に強かった。

 でも、ドラゴンの出現は、本当に猫にとってピンチだったらしい。どうやってだかはわからないが、猫は対ドラゴン戦艦を造った。これを造る技術とかは、マイティも知らない。ネズミに猫が一時支配みたいなことされてた……なんてこともあるのかもしれない。もしかしたら、違う星へ追い出された猫とかもいたかも。それくらい、すごかったっぽい。

 ━━で、ドラゴンに対抗する船を造った。猫はこれに勝負を賭けていた。コレに負けたら、降参しようとまでしていた。

 結果は、負けたけど、キャトラ側は七竜うち、四匹の竜を倒したらしい。

 詳細はもう不明。その後、ドラゴンマスターがどうなったかマイティは知らない。記録になかった。でもそれ以降、ドラゴンたちはマウラからいなくなったのだと思う。

 ドラゴンが歴史に現れることはもうない。

 少なくとも、記録にはない。ドラゴンマスターもドラゴンも、歴史からえた。もしかしたら、意図的に歴史の裏に消されたのかもしれない。━━戦争があったことすらも━━。

 機械の翼持ちし、ドラゴンマスター・フルネリウス。その姿は、星よりも大きく、直接ドラゴンの背にまたがり、ネズミのくせに宇宙で息をし、ドラゴンにも負けないようなブレスを吐いたという。

 くだらん誇張だろうと思う。機械の翼というのは気になった。もしかしたらロボットかもしれない。その選も当たった。でも、見つからなかった。まさか、マイティも<機械の翼>がゼンマイのことらしいとは思わなかった━━。

ドラゴン等、信信憑性に欠けることだが、実際うちの星にはサメ型の長距離移動船(通常移動・ジャンプカともにミラクル!)があった。それいじってたら、レザリアムのことも本当だとわかった。

 ドラゴンについても詳しく調べた。うちの星で三竜、マウラにはもう少し多くの竜伝説があった。

 サメ型船にも三竜のデータがあった。戦闘能力とか結構詳しく。他の竜のデータは見つからない。

 ━━フルネリウスは、死んだはずだ。ネズミが生きられる時の長さではない。機械でも、もう壊れただろう。だから、きっと、密かに代々いろんなネズミとかに受け継がれてきたのだ、ドラゴンマスターの技が。

 ドラゴンマスターの末裔。 

 ドラゴンの末裔。

 しかし、三竜のトライアングル・フォーメーションに囲まれていた、三角形の船は、肉球マーク。

 そんなこと、構っている場合ではなかったが。

 ━━ドラゴンと、ドラゴンマスターの死。これこそ、マイティの野望。フライを笑わすことの決くらいの夢。彼女と、彼女の星を守るため。脅威は消す。

 本当はネズミたちに感づかれないよう、極秘裏に処理したかったけど。猫たちにも、できれば忘れさせたままでいたいけれど━━戦争、なんか……。

 ドラゴンを倒し、この艦隊もできれば破壊したかった。武器なんか、吐き気がする程嫌い。嫌いだけど、フライを守るためには残しておいた方が得策だ。相手が猫だろうがなんだろうが、死らん。もう倒す。そして、フライは女王様。マイティは、冷酷な猫にもなれる。━━フライのためなら。

 それが、壊れた姫・女王ロボットのフライでも。偽りでも。幻影でも。彼女の望みと反していても。フライは、女王になるのがきっといい……。そう思わないと、今まで僕のやってきたことはどうなる? 今さら、君を助けられない……。僕も、同じだね。ばかな国王と王妃と。

 僕は、本当は天才なんかじゃない。ただの一匹の弱虫な黒猫だ。

 フライに笑ってほしかっただけ。女王になって笑ってほしかっただけ。勝手なばか猫。

 なんだかんだ言って、王家には逆らえない。本当は、死ぬのは怖い。存在を脅かされるのは怖い。今までが全部嘘になるのは怖いんだ。やっぱり、僕はケージだね……。

 三竜は、主の船を守るように三角船の前に横一列に陣形を変える。

 三角船は、後退。

 ……ば~か。足手まといになるくらいなら、最初からもっと下がってろ。ま、レザリアムはドラゴン以外にゃ撃てないけど。あとでてめーも黒竜砲で死にな。

 横一文字にドラゴンたちに陣形を整えさせ、カナルの船は下がった。

 大丈夫。もう翔たちは逃げていった。

 あとは、いかに時間を稼げるか━━。

 本当は一隻くらいサメ型船を破壊したいところだけど、大それた望みは身を滅ぼす。

 レザリアムは、最初の一発を発射するのに時間を要する。そんなに長い時間じゃない。しかも、レザリアムは<溜め>ができて、溜めれば溜めるほど威力が上がる。百%の奴なんか打ち込まれたら、この三色の子竜なら三発くらいで死ぬ。親竜なら六発くらい。時間かかりすぎて百%なんてまず無理で、そんなことをしてたら、反撃くらいまくってドラゴンシールドが持たないだろうけど。

 しかし、あの船は足が速い。いくらでもワープする。もちろん、ドラゴンも超速い。ドラゴンに対抗して、あんなワープできる船が造られたのだから。あんま<溜め>なきゃ、タイムロスとかも狙えそうにない。相手は七隻。同士討ち等で通常シールドが傷ついた艦もあるが、新たに耐ドラゴンシールドを張られたから、そんなの関係ない。

 翔たちと逃げるよう説得するのに少し時間がかかってしまった。

 子竜たちは、途惑っている。

 じいさんなら、遠くからテレパシーのみでドラゴンたちを使役したり、シンクロして、手足の用にドラゴンたちを操ったりもできる。でも、カナルにはできなそうにない。無理に動かすのはもちろんしたくないし、シンクロもできそうにない。

 彼らの協力の下、合意の下での指示でも、うまくできるか……。

 自分の頼みで、うまく、子竜たちが動いてくれるか。

 自分に、マイティを足止めする頭があるか。

 子竜たちは、どうしていいかわからないから、カナルに来てくれと言った。指示してくれと。心細い声で。

 だから、カナルも宇田へ出てきた。本当は、自分なんか足手まといじゃないか、とかも思った。

 じいさんクラスになると、星で待ってれば安全かもしれないけど、子竜たちだけ危険な目に遭わせられない。

 じいさんも、あの戦争のとき宇宙へ出た。ドラゴンたちと宇宙へ出た。友だちだから。

 宇宙へ来る前、子竜たちが言った。

『意味があるの? 一時避難させても、すぐ、敵に追いつかれちゃうんでしょう?』『カナルは怖くない? そう……怖いんだね』

『でも、じっとしていられないんだね』

『……わかった。いいよ。一緒に行く』

『その、カナルの好きな人と猫とも友だちになれるかな?』

『素敵な、人と猫だったら、テレパシーを送ろう』

『友だちになって━━って』

 優しい子供たち。

 でも、すぐにそういってくれたわけじゃない。カナルもそのために友だちになったんじゃない。カナルは、ずっとじいさんの店にいたから(浮気調査の報告は超特急で済ませた。カナルはまじめ)、自分の船に救援信号が入っていると知るのが遅れた。 

 子竜たちに夢中になっていたから、フライの戴冠式が近いことは知っていたが、こんなに近づいていたとはわからなかった。日付とかもよくわからなくなっていた。テレビも観ていなかった。テレビでもさすがに姫君奪還予告なんてのはやってなかっただろうが━━。いかに猫がばかでも、マイティがさせなかっただろう。

 師匠を半分見送って、子竜たちがバトルをオーケーしてくれて、カナルは急いでマウラから出て、翔たちの近くにワープした。同時に子竜たちもどこからかワープしてきた。

 子竜たちには名前がある。名付け親は師匠。 

 フレアドラゴンは、クラビウス。

 コスモドラゴンは、シラー。

 メテオドラゴンは、プトレメウス。

「行くよ。みんなっ!!」

 視界が開けた。カナルと子竜たちの視界がシンクロした。でも、カナルには、船内とか、船内ブリッジの展望窓とか、レーダーとかも見える。いろんなことが認識できる。クラビウスの眼。シラーの眼。プトレウスの眼。みんなの心。カナルの船はまだ後退していく。宇宙が見える。まるで、宇宙に自分の足で立っているみたい。宇宙を泳いでいるみたい。宇宙を感じる。温かな宇宙。蒼い宇宙。様々な思いに満ちた宇宙。

 でも、驚いている暇も、感動している暇もない。

 来た! 赤・オレンジ・黄色・緑・蒼・藍・紫。

 七色にきらめくレーザー光。 ━━レザリアム。


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