第二話 「起動──全艦、対七竜砲発射準備!」
「ど、どらごんますたー? マジで?」
「いいから‼︎ この混乱に乗じて逃げて下さい‼︎ ぼくがなんとか時間稼ぎしますから‼︎」
「……って、たって……」
ドラゴンはでかい。正面の黒いのはでかい。蒼いのは蛇みたいに長くとぐろ巻いてるし、どんくらいかよくわからんが、これもでかい! 赤いのもでかい!
ところで、フレアドラゴンは知らんが、なんか、コスモとメテオは、名前反対のがもしかしたらいいかもしれない。しかし、猫たちはなぜか宇宙に蒼いイメージがあるらしい。そんなことは翔は知らない。
とにかくでかい! 最近翔の家の前にできて、そのお陰で陽射し遭られて迷惑してる高層住宅より高い! 東京タワーより高い! ユウゾウを縦にして十個並べたよりもたぶん高い⁈ 横幅もありまくり!
とにかくもう何キロメートルとか全然わからないくらいにでかい! 全長見えないくらいでかい‼︎
「これなら勝てるんじゃないか? 降参してくれるかも。現に忠告しなくても逃げてるし」
「ライズや他のサメ型船を舐めるなよ‼︎ こんな子竜じゃまず購ち目はない‼︎」「嘘⁈ これって子供⁈」
フライも叫んだ。
「なにそれ⁈ 私も知らないっ‼︎ あの船って、そこまで強いの⁈ ドラゴンは伝説の宇宙最強の生物なんじゃないの⁈ 黒龍砲……よりすごいのなんて、私、見たことない」
黒龍砲じゃ、アレはやつけられないだろう。
「姫も、戴冠なされたなら、あるいは、教えられていたのかもしれません。猫の王家の究極シークレット・ウェポンです!」
「なんでそんなこと知ってんのよ⁈ マイティは……まぁ、もしかしたら知ってるのかもしれないけどさ。でも」
話がでかすぎて全然わからない。
「とにかくお逃げ下さい‼︎ サメ型船以外の待避が終われば、きっとそれで攻めてくる‼︎」
カナルは、フライたちと会ったあの後すぐ、マウラへ行っていた。
翔たちがエイムたちと騒いでたりとか、追っ手を追い払ってたりとかしてるうちに、追い越してしまったらしい。カナルの船はユウゾウよりスピード重視だし、依頼人を待たせてはいけないので、超特急でやってきた。だって、カナルは宇宙を翔ける賞金稼ぎだから。
フライの役に立ちたいなら兵士になるとかってのが標準的な気もするが、なぜかカナルは質金稼ぎになってしまった。
しかし、実はカナルは、普段は賞金稼ぎというより、探偵みたいなことをやっていた。それで、依頼人の秘密に関わるから詳しく言えないが━━ええと……浮気調査していた。これは秘密。バラすと信用なくなって、仕事がなくなっちゃう!
ドブネズミの、メガネかけたまじめそうな旦那さんを尾行してみたけど、とても誠実。こりゃあ潔白ですぜ白いハツカネズミの奥さん。━━二日で飽きた。
明日にはもう無実だあんた愛されてるぜ幸せだぜ奥さんってな報告書を出そうかと思いながら、旦那さん尾行していたら、ネズミの星なのに、猫の永遠のアイドル・ミミちゃんのグッズを売っている店を見つけた。ついフラフラ入ってみた。
そしたら、ゼンマイネズミのじいさん(今にも壊れそうな古びたロボット)がいた。灰色の一メートルあるかないかの小さなネズミ。じいさんは、<元ドラゴンマスター>だった。じいさんは言った。
「おまえ、ドラゴンマスターになれ」
……なった。
カナルが、フライたちと別れてから、まだ一月ちょいくらいしか経っていない。カナルがマウラにいたのなんて短期間だ。なのに、実はまだ仮免みたいなものなのだが(親ドラゴンを連れてくるなんてとんでもない!)、ドラゴンマスターになっちゃうなんて……もしかしたら、カナルはあのマイティより天才なのかもしれない。そういえば、猫武術習っていたとかも言っていた。習い事は得意なのかも?(そういう問題か?)
師匠はちょっとトボケたネズミだけど、カナルはとても好き。 師匠は言った。
「誰かを殺すドラゴンマスターにはなるな。誰かを生かすドラゴンマスターになれ」
かっこよすぎた。 だから、ぼくは、翔とフライ様を生かせるよう、努力します。師匠……!
ライズは、マイティの前に空中ウインドウを次々開き、各ドラゴンの全身・アップの映像と、全長等の文書データを表示させていく。
━━危なかった。なぜ、フライにドラゴンマスターの知り合いがいるのかはわからないが、危なかった。親竜たちがやってきたなら、勝てなかったかもしれない。だが━━あの種類の子竜三匹なら、別だ。━━勝てる。
艦長席で、マイティは悪役っぽく笑った。けど、ちょっと汗掻いてた。
「ライズ以下、対ドラゴン艦隊の主導権を我に! 全艦、耐ドラゴンシールドを張れ! 急げっ‼︎」
自分の乗っていないすべてのサメ型船の主導権を奪い、自分で操る。
だって、他の猫たちはこれらの船を使いこなせない。他の奴らには任せられない。
これは、リーダー艦・ライズ故にできることである。
「そうだ! ライズ! サメ型の全艦に通告しろ‼︎ 主導権は奪った。ドラゴンと戦う! 脱出カプセルでも艦載機でもいい! なんかに乗るなりして、できるだけ遠くへ逃げろ‼︎ 一匹でも一体でも多く‼︎ 我が艦の奴らも同様だ‼︎ みんな、逃げろっ‼︎ 死ぬぞ‼︎」
騒然としていたブリッジが更に騒然となる。
「いいからてめ〜ら出て行け‼︎ 邪魔だっ‼︎」
猫たちはマジでマイティ見捨ててブリッジから出て行った
「もうイヤっ!」とか、「キレてる‼︎」とか、「マイティこわい‼︎」とかいって。
きっと、あの勢いなら本当に艦内から脱出するだろう。それでいい。
「それと、ワイズを我が艦隊後方へジャンプさせろ。チッ。最初から主導権奪っとくんだった。頭ヘンになって、忘れてた。キール、おまえも、自力で脱出しろよっ……‼︎」
他の、戦力外の船が避難していく。サメ型船からも、猫や、ロボットが逃げていく。脱出カプセルも、搭乗員が操作できる。そういうふうに猫が造った。
いろんなのが、一杯逃げていく。正面のドラゴン側は避け、三方へ散らばる。なんか変な流星群みたい?
みんな、ブリッジからいなくなったら、なんか急に、テレビの音が耳に障った。生放送。まだやってた。ピンクの猫がいかにも急ごしらえなキャスター席で、超早口でなんか言ってる。他の報道猫が騒ぐ声も聞こえる。ピンクの猫の後ろを横切っていく猫の姿も見える。
「━━と、いうわけで! 先程まで映ってた報道船のスタジオの、王と王妃、ゲストの皆様方などは、足の速さが自慢の報道船でそのまま避難し、けれど、わたくしや少数の者たちだけは小型報道船に乗り移り、報道魂捨てずに、姫君の乗った船を追尾することにしました! ドラゴンとマイティ様の戦闘は、別の小型報道船━━搭乗員ゼロのオート報道船で、可能な限り報道続行させます‼︎
激しいバトルをできる限りテレビの前のみなさまにお届けいたします!
しかし、ライズは脅威の移動力・跳躍力ですし、相手はドラゴンですし、どこまでお伝えできるか、全然わかりません‼︎ マイティ様の運命やいかに⁈
それじゃ、ドラゴンのほうへ映像回し……」
うるさい。テレビ、消した。 ……しかし、ドラゴンマスター……。一体、どこから薄いてきたんだ……?
もともと、マイティがマウラを占領したのだって、ドラゴンマスターのことがあったからである。マイティは、ロボットとかを使って極秘裏にドラゴンマスターを探しまくった。けど、見つけられなかった。もちろん、ドラゴンも。
さすがの彼も、まさかミミちゃんショップの店長の、壊れたようなゼンマイネズミがそれだとは、気づけなかったのである。実はあのじいさん、強者なのである。だって、彼、元ドラゴンマスター。
なんで、マイティがドラゴンマスターのこととか知っているのかといえば、これは、彼のウェポンと同じくらい秘密なことなのだが、その昔、まだ地球なんてできていないくらい昔。猫とネズミの古代戦争のとき。彼のウェポンを使う猫たちと、とあるドラゴンマスターやドラゴンたちが激しく争ったことがある。
結果をいえば、対ドラゴンウェポンを用いても、猫たちはドラゴンたちには勝てなかった。猫の歴史から妹消された戦争である。
だから、猫はネズミと仲良くしなければならなくなったのだ。調べたが、ネズミの歴史にもその戦争のことは残っていなかった。マイティは、密かにネズミ王室を幽閉している。拷問もした。チーズをやらないという、ネズミにとっての最大の携問(?)。でも、奴らなんも知らなかった。
本当に、知らなくってよかった。ネズミの星を占領したときは、まだマイティも若かった。血気盛んで今よりばかだった。熱くなりすぎてた。そりゃ、いろいろ下調とかべしたけど、自分の直感(?)は、
「ネズミどもが覚えてるわけねぇ。だって、猫だって忘れてるし。猫のがネズ公より頭いいはずだし」
と告げていたが、もしかして超極秘で、ネズミ王家はドラゴンとドラゴンマスターを所持していて、それで反撃される可能性もあったから。
マイティは見つけたのだ。幼い頃、王城を探検して、彼は地図を作っていた。ばかな猫たちは、自分たちの城のすべてを把握していない。
けど、まだ子供だったけど、すでに聡明だったマイティは、王城の地図を作った。
その際、見つけた。誰も知らない秘密の部屋。ドラゴンマスターとの争いの書かれた封印の書。禁断の書。ばかな猫たちには読めない古代文字も、彼には読めた。わからない文字も、調べて解明させられるだけの力が彼にはあった。
その際に例の究極ウェポンのことも知った。そして。心に誓った。守ろうと。この星を。━━フライを。
まだマウラに眠っているかもしれない脅威。それを、自分は探し出して、この手で消し去るのだと……。
彼が変わり始めたのは、その頃からだったのかもしれない……。その後すぐ、フライとの婚約が決まった。地図の一件が大きく評価されたのだ。
ばかな王と王妃はもちろん知らない。ライズ、ワイズ、レイズ、アイズ……サメ型の、これらの船・計七隻。これは、対ドラゴン用に開発された、超古代戦艦なのである。
もう忘れちゃってるくせに、王家は昔からのしきたりだけで、わけも知らず、あの船をガードさせている。移動力だけ伝えられて、便利な乗り物にしている。遠い星へ行って異星人を観察して喜んでる。
<遠い星>……。もしかしたら、<檻城の姫君>は古代、本当にあった話なのかもしれない。確証は全然ないが。
対ドラゴン用古代戦艦は、脅威の破壊力・守備力・移動力を持っている。蒼龍砲? 黒龍砲? そんなのものは、いわばネズミ取りに過ぎない。
キールも他の猫たちも何も知らない。あの船の真の使い方を知らない。
知っているのは━━そう、僕だけだ……。
昔は、もっともっとあの船があったらしいけど、もう七隻しか残っていない。
━━最強兵器。
使いこなせるよう、マイティは密かに練習した。彼なら、たった一匹でこの船を乗り回しても、この船でどっか遠くへ行っちゃっても、誰も文句は言えなかった。ばかな王たちは気晴らしに僕がドライブしてたくらいにしか思っていない。
もちろん、例のウェポンはまだ一度も使っていない。ライズ極秘電子便覧を何ヶ月もかけて検索して、まだウェポンが使用可能なことを確かめ、その使い方を覚えた。
マイティは優しい猫。それで、どっかの惑星を練習用にちょっと破壊するなんて、そんなことはできない。決してしない。それに、できない。対ドラゴン砲は、特別にドラゴンにしか発射できないようになっている。危険すぎるからだ。黒龍砲やらの、宇宙用ウェポンも、すべて、猫やネズミやそういった生物のいる星へ向けて使用することや、星の中での使用は不可能になっている。
それは、この宇宙最大の禁忌なのだ。
「戦闘してたら、自分らの星が破壊されて、帰る所なくなっちゃった」なんて、しゃれにもならない。
まあ、キャトラみたく、人工衛生を使って、周囲にシールドを張っている星なら、まず破壊されない。
マイティは、艦長席の肘掛けの右手前方についているキーボードを、黒い手で操作する。
キーワード1【ライトニングドラゴン】プロテクト1━━解除。
キーワード2【プロミネンスドラゴン】プロテクト2━━解除。
キーワード3【フレーアドラゴン】プロテクト3━━解除。
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レーダーを見る。海賊船の群れが、逃げていく。フライたちが━━逃げていく。「━━逃がさないよ。フライ」
マイティは、ライズへ命令した。
「全艦、対七竜砲・発射準備!」




