第一話 「ドラゴン、現る」
マイティ側から見て左。翔たちから見て右。ユウゾウを遠巻きにした艦隊の向こう側に、突然、三十集を越す船体が現れた。いずれの船にも共通するマーク。━━髑髏。
「翔‼︎ 助けに来たよっ‼︎」
ユウゾウに通言が入る。スクリーンに、真っ白な猫。瞳はビー玉みたいな水色。翔が持っている物より汚れていない、新しい海賊帽。
翔は叫んだ。
「━━エイムっ‼︎」
声がした。不意に、翔の頭の中で。フライの頭の中で。
『今、行くよ』
不思議な━━知らない声。━━そして。
ドラゴンが舞い降りた。
宇宙最大の神秘の生物。
コスモドラゴン。フレアドラゴン。メテオドラゴン。
三竜が、色も鮮やかに、ユウゾウの正面、右後方、左後方に、音もなく現れた。
正面、メテオドラゴン。黒柴のボディ。大きなコウモリような翼。三竜の中で一番体重があり、同時に、最大の破壊力・防御力を持つ。三竜の王のような存在。凶暴な性質らしい。
右後方、コスモドラゴン。流れる星のような蒼い体。体長・スピードは三竜中最高。比較的、穏やかな性質らしい。
左後方、フレアドラゴン。赤いドラゴン。攻守・スピード、バランスのとれたドラゴン。ハイト・ウェイトも中間的。性質は気まぐれといわれる。
メテオドラゴンは、ユウゾウの前方、ワイズよりも前に出現していた。
メテオドラゴンは、腕や尻尾で、直に相手を攻撃するタイプだ。
コスモドラゴンは、泳ぐように優雅に宇宙を駆け抜け、それが通った後に息をする者はいないといわれている。
フレアドラゴンはブレス攻撃。光線のように長く吐き出されるブレスが、舐め尽くす炎のようにしてすべての者の命を奪うという。
━━翔は見た。ユウゾウ側から見て左手に現れた、三角形の中型船。
「……カナル……_⁈」
ネズミは猫が大嫌いだ。マイティが大嫌いだ。ちょっと前までは、猫ってばかだけどいい奴? とか思ってた。平和ぼけしてた。猫は嫌い。猫は最低。マイティはとにかく嫌い。コイツのせいで、うちの星は猫の星の占領下だ。よくわかんない税をたくさん取り上げられる。大好きなチーズが食べられなくなっちゃう。
街に猫がたくさんやってきた。猫ロボットとかいうのも来た。大嫌いな猫たち。ネズミは隅っこに追いやられる。それなのに、宇宙人にさらわれたばかな姫さんのせいで、わざわざこんな所まで連れてこられた。
フライ姫。知ってる。昔は親と一緒に何度かマウラに来てた。友好関係がどーのと……。よく笑う猫だった。かなり好印象だった。
でも、もう猫は嫌い。嫌いな猫の《《姫》》なんか嫌い。ネズミ取りも嫌い。猫型兵器も嫌い。みんな大っ嫌い。
いきなり仲間割れを始めたときにはちょっと楽しかった。だけど、髑髏の船がワープしてきた。ドラゴンがワープしてきた! なんで猫のゴタゴタに巻き込まれなきゃならないの? もうやだ! 死ぬのは嫌だ!
マイティの動きは迅速だった。
もうキールなんかどうでもいい。ネズミが勝手に撤退して行くけど構わない。ライズは、レイズやアイズ、ビイズなど、サメ型艦を率いて後退。他の船もできるだけ散開・避難させる。
猫たちが右往左往している。
狭いブリッジが騒がしい。自動操縦なのに、なんでこんなにたくさん猫が搭乗しているのかというと、みんなフライが心配だったから。自分から乗ってきたのだ。このライズにまで乗って来ちゃった。ばか目立ちがりの王とかも、猫の星からネズミのへワープするときとかも、ついさっきも━━なんでかこの船に乗ってたし。もしかしたら、ばかなあの二匹も、フライのこと、心配だったのかな……? 娘として。だとしたら、いいな。
猫は、ばかで愛おしい。どうせなら、必要以外はすべて機械に任せればよかったのだ。そうすれば死なずに済むのに……。
ネズミは最初から必要以上に搭乗していない。一応手動操作用に何名か乗っていただけだ。白兵用にしても、ロボットをもっと使えば、猫はあまり死なない。マイティはロボットや船のことも心配した。たとえそれが、人工知能でも……。一匹でも一体でも多く逃げ延び、たとえ船が撃破されても、多くの者が脱出艇等で逃げられるよう……。宇宙は残酷だ。宇宙服がなければ、酸素がなければ、猫は生きていけない。あるのは、惑星や小惑星、恒星、衛生、人工衛星━━そういったものだけなのだから。
心の中で祈る。祈りながらも、マイティは声を張り上げる。
「報道船、下がれ‼︎ 両陛下をお守りしろ‼︎」
あんな王と王妃でも━━王と王妃なのだ。護衛をつけさせ、避難させる。
マイティは本当は優しい猫だ。
━━髑髏の船は問題じゃない。今、問題にすべきは、あのドラゴンたちだ……。
「あなた方も、早く避難して下さい!」
カナルはキールへ通信を入れた。彼はその言葉に従った。もう誰も彼なんか見ていない。
ユウゾウのブリッジ。スクリーン上のエイムは目をむく。
「ひえ~何々? 三竜⁈ あれって翔の仲間なの? あたいら来る意味なかった? 必死に考えても名案浮かばなかったから、ツテ頼って、いろんな宇宙海賊たち集めたのに~‼︎」
スクリーンプラスワン。三毛猫カナル登場。
「翔、フライ様を連れて早く逃げろ‼︎ 髑髏の船の奴らも仲間か⁈ 逃がしたほうがいい‼︎」
「な、なに言ってんだ⁈ カナル‼︎ こんなすげ~ドラゴン……一体どうしたんだ⁈」
「詳しく話している暇はないけど、ぼく━━、ドラゴンマスターになったんです‼︎」




