第七話 「助けて」
マイティの搭乗したサメ型の船・ライズは、無謀にも、最前線、ユウゾウの正面に陣取っていた。言うまでもなく、集まった艦隊の総司令官はマイティである。
マイティは、いきなりユウゾウを攻撃させた。予定と違う。ライズはこんな前へ出る予定じゃなかった。四方に護衛をつける。そうマイティ自身が言っていた。のに、違う。ライズとぼぼ同タイプの船・ワイズに乗った副可令官キールは、この状況でもまだ冷静な猫だった。マイティも当然そうだと思った。でも、違った。意見したかった。したかったけど、できなかった。だって、マイティは超偉い。
彼は案じた。姫の身を案じた。みんな姫が大好きなのだ。だから、キレているのだ。だからキールは言いたかった。連続砲撃はさすがにヤバイと。姫の身の安全を最優先する、これが今回の作戦のはずだ。なのに、ライズは自らユウゾウを攻撃する。
ライズは最強の船である。足も速いが、オフェンス面もディフェンス面も最強。とにかく強い。光線がこれでもかってくらいユウゾウを襲う。曲線を描いて、ユウゾウの左右を攻める光もある。
コレ、生放送しているはずである。クレームとかこないのだろうか。
キールは、猫の星で二番目の天才といわれる猫である。
このままじゃ、いつか敵船のシールドは維持できなくなる。そしたらどうするのだろう。ユウゾウも反撃している。ライズもシールドを張っている。なんで一騎打ちしてるんだろう? ほんとにこの黒猫に任せてていいのか? いつもの彼ならこんなことはしない。
彼に意見できるのは、王と王妃と姫くらい。でも、姫はあっちの船の中だし、王と王妃はばかだから、娘が死ぬまで「た~まや~」とかいってるだけかもしれない。それっぽい。
━━通信入れて、言ってみた。
「総司令官」
「━━ん⁈」
目が怖い。
「いえ……なんでもありません……」
ああ。どうか姫様、ご無事で……っ!
「シールド損傷率六十%。このままでは間違いなく撃破されます」
ユウゾウの声はいつにな震えている。そりゃそうだ。このままじゃ、ユウゾウ自体が破壊される。震えるはずだ。それは同時に、船内のすべての者の死を意味する。「どういうことだ⁈ フライを殺す気か⁈」
翔とフライは再び、船長席に着いていた。
「わかりません。ギリギリまで攻撃して、脅すだけ脅して、船内に乗り込んでくるつもりかもしれません」
「その前に、撃破されるかもしれない!」
「翔、フライ。脱出艇を使って、あなた方だけでも逃げるべきかもしれません」
「なに言ってんだよユウゾウ! フライと俺だけじゃない! みんなで生き抜くんだ‼︎」
「翔……」
フライもフライで喚いている。
「繋がらないよ! ライズに通信繋がらないよっ‼︎ どうして⁈ あんなマイティ初めて見た‼︎ どうして⁈」
マイティマイティ喚いているのは、こんな時だがなんかむかつく。
「ユウゾウ。反撃強化しろ!」
「もう限界です」
「ライズの弱点は⁈」
「そんなものありません!」
「どうする⁈ ジャンプして逃げるか? ━━フライ、マイティはだめだ!他の所へ通信入れよう! あれだ! 報道だ! フライの親だ‼︎ こうなったらフライだけでも助けてくれるよう頼め! ユウゾウ早くしろ!」
「シールド損害率七十%。通信繋がります」
空中スクリーンにピンクの猫が映った。ほんとにいた。ピンクの猫! しかも、ショッキングピンク! マイクを持っていた。
「みなさん! ライズと激しいバトルを繰り広げる噂のお魚船ユウゾウ・ブリッジと通信が繋がりました!」
とかなんか言ってる。生放送に映されているらしい。それどころじゃない。ユウゾウ・ブリッジにもテレビはあるけど、最初からつけてない。
━━それどころじゃない。
「王と王妃を出せ! フライを殺す気か⁈ 死ぬぞ‼︎」
「みなさん! 犯人が命乞いしています!」
「助けて‼︎ お願い‼︎ 私たちを放っておいて!!」
「みなさん! 姫君です! 哀れ姫君‼︎ 洗脳されているとの情報は真実か⁈」
「私は正気よ! みんなっ、聞いて‼︎ 翔は被害者! 私が家出に彼を巻き込んだだけっ‼︎ 私、もう姫なんて嫌だったの‼︎ 重荷なの! 檻なのっ‼︎」
「みなさん! お聞きしましたか⁈ やはりフライ様は洗脳されておりますっ‼︎」「違う! 違うよっ‼︎」
「シールド損傷・八十%!」
「ごめん、ごめんみんなっ‼︎ 期待裏切ってごめん! お父様お母様ごめんなさい‼︎」 キールはもう我慢できなかった。姫は死ぬ。このままでは死ぬ。だから、彼は動いた。
マイティはばかな猫じゃない。ちゃんと頭のどこか片隅に理性も残っていた。キレていたけど、完全にブチキレてはいなかった。だから、彼はキャトラ鑑通常装備の光龍砲しか使っていない。でも、これでも、もう少し、あとほんの少し攻撃したら、死ぬ? フライは死ぬ? 僕の姫。僕の愛しい姫。死んだらどうなる? フライが死ぬ死ぬ死ぬ━━……。
敵船シールドはもう持たない。シールドなしなら、光龍砲でも、充分破壊できる。あの船を。そして、フライは….....。
死ぬ。
━━笑っていた。あの男の前で。だけど、彼女は笑ってくれた。━━小さい頃なら。━━僕に。僕の名を呼んで笑っていた。
ライズ・ブリッジにもテレビがある。生放送が映っている。フライが喚いている。 彼女が言った。
「助けて! ごめん、マイティ‼︎ 助けて‼︎」




