第六話 「不穏」
翔は、ユウゾウ内の、自分用の個室のベッドの上に倒れた。大の字で仰向けになる。
「は~。なんだったんだろう一体……」
やっと、エイムから逃げ出してきたのだ。
今日は、いろいろありすぎた。翔は疲れて、頭が全然回らなくなっていた。
まず、エイムたちから襲撃を受けて。ブリッジでフライと一緒に縛られて………フライが連れて行かれて……。気づいたら、宴会で……。
なんでこうなったのか、よくわからない。とりあえず、フライは星へ連れ戻されなかった。城へ閉じ込められなかった。
「……よかった……」
自分が何を言っているのかも、もうよくわからない。翔は目を閉じた。もう寝てしもおう。そう思った。━━そう思ったのに、ドアがノックされた。
「……? はい」
ドアは勝手に開かれた。翔は寝たまま。
背中に禿のあるカラフルな猫だった。サカモトだ。サカモトは抑えた声で一言。
「翔。さいてー」
そう言って去っていった。翔はもちろん、わけがわからない。とりあえず、気にはなったが、再び寝ようとした。
またドアをノックされた。ドアが開く。翔は寝たまま。━━グリーンの猫。スギタだ。
「翔、最低」
スギタもそれだけ言って去っていった。
翔は三度寝ようとした。またドアがノックされた。
「今度はなんだよ?」
翔は体を起こした。ベッドの上であぐらをかく。
ナカジマだった。真っ白なペルシャ猫。
「翔っ! てめー、いい加減にしろ!」
いつになく、ナカジマは怒っていた。
「カナエちゃんをフル稼働させやがって‼︎ オーバーヒートするぞ‼︎」
「おまえやっぱりカナエに気があるだろ……?
「そ、そんなことは今は関係ないっ‼︎ とにかくっ、翔っ‼︎ おまえ、最低だぞっ‼︎ 男のクズだっ! 女の敵だっ‼︎」
で、ナカジマも出てった。「男のクズ? 女の敵?」
ますます、わけがわからない。翔は寝つきがいい。寝ようと思えば今すぐ寝られるだろう(また邪魔が入らなければ)。でも、翔はベッドから下りた。部屋から出た。
とりあえず風呂へ入ることにした。入るのを忘れていたのを思い出した。
翔は風呂に入りながら考えた。なんでみんなが怒っているのか。
宴会がまずかったんだな……と思った。カナエだけじゃ全然足りなくて、慣れない戦闘用ロボットとかもカナエを手伝っていた。全自動料理マシーンもオーバーワークしてた。臨時にホール係やってるロボットもいた。酔っぱらいにからまれてるのとかお酌させられているのとかもいた。もともとこの船は、フライが、自分と翔のためだけに造らせた船だ。
あんなにたくさんの猫にメシ食わせる用にはできていないのだ。だから、あれがマズかったのだと思った。
風呂から上がると、頭が少し冴えた。パジャマ代わりのシャツの裾を意味もなく伸ばしつつ、部屋へ戻りながら、翔は明日になったらエイムに言おうと思った。もう宴会はやんないでくれと。
まだ喧噪はここまで聞こえてくる。宴は終わっていないらしい。みんなが怒るのも無理はない。でも、今日はもう文句を言いに行く元気がなかった。
喉が痛かった。頭がまだ朦朧とする。瞼が重い。




