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或る人のFIRE日記  作者: 鷺岡 拳太郎
2025年01月
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FIRE後に初めて受けた人間ドック(2)


K病院に着いたのは朝の8時5分だった。




人間ドックは8時30分開始だったので、少し時間に余裕を見すぎたかもしれない。そんな思いを抱きながら病院の中に入る。一応病院自体は7時45分から入れるようになっているようで、朝早くても特に問題なく中に入ることが出来た。








健診センターの受付は2階と案内が出ていたので、その案内に従って階段を上がる。




前もって病院から自宅に書類が送られてきており、問診票や胃カメラについての各種同意書には前日に記載を終えていた。


その記載済みの書類と保険証を、受付に差し出す。


受付の事務員の女性は、


「保険証のコピーを取らせていただきます。準備ができるまで、前の待合席でお待ち下さい」


と丁寧な口調で言った。




受付前の待合席に視線を転じると、10個くらい椅子が壁側に向かって並んだ狭いスペースがあり、そこにはすでに二人の男性が座っていた。おそらく私と同じく健康診断を受けに来たのだろう。


一番前の席が空いていたので、私はその席に座る。


目の前の壁をぼんやり眺めながら、私の名前が呼ばれるのを待っていた。




五分ほどして、


「◯◯さん」


と私の名前を呼ばれた。




「お待たせしました。こちらです」


看護師と思われる女性が、カルテを持ちながら私を誘導する。検査着とスリッパが置かれた場所まで来ると、「フリーサイズでよろしいですか」とその中から一セットを手渡してきた。




人間ドックは心電図、エコー検査といった上着をめくりあげて上半身をむき出しにして受ける検査も多く、基本的には検査用の簡易着に着替えて受けることになる。




私は検査着、スリッパを受け取って、目の前の更衣室で着替えた。


着替えも終え、更衣室から出ると、先ほどの看護師が近づいて来た。




「こちらが休憩室になっています。検査の合間はこの部屋でお過ごしください。今日一日使うことになる椅子番号は決まっているので、その番号の椅子に座るようにお願いします。◯◯さんは5番の椅子になります」




休憩室の中に視線を転じると、前に置かれたテレビに向かって、ソファーがそれなりにゆったりとした間隔で並んでいる。それぞれのソファーの背面には番号が印刷された紙が貼り出されていた。テレビでは、朝のワイドショーが流されている。




個人専用の休憩用ソファーが用意されている人間ドックは初めてだった。




5番のソファーがその部屋の中央辺りに置かれているのを見つけ、そのソファーに腰掛けた。


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