昭和の文豪たち(4)
戦争は多くの作家の運命を狂わせていく。
1925年に制定された治安維持法によって言論統制、弾圧が進められ、始めにその影響を受けたのは共産主義思想をもつ作家たちだった。
その中のひとりに、小林多喜二がいる。
代表作は「蟹工船」。
残念ながら、私は読んだことがない。
物語は、オホーツク海でカニ漁を行う「博光丸」という蟹工船が舞台になる。
蟹工船では、搭載した小型船でたらば蟹を漁獲し、ただちに母船で蟹を缶詰に加工する。蟹工船は「工船」であって、「航船」ではないため航海法が適用されず、また工場でもないことから労働法規も適用されなかった。
そのため、蟹工船は法規の空白域であり、海上の閉鎖空間である船内では、東北一円の貧困層から募集した出稼ぎ労働者に対する資本側の非人道的酷使がまかり通っていた。
「博光丸」の監督である浅川は、労働者たちを人間扱いせず、彼らは劣悪で過酷な労働環境の中、暴力、過労、病気で次々と倒れていく。
ある時転覆した蟹工船をロシア人が救出したことがきっかけで、労働者たちは「プロレタリアートこそ最も尊い存在」と知らされる。
当処は無自覚だった労働者たちはやがて権利意識に覚醒し、指導者のもとストライキ闘争に踏み切る。
プロレタリアートとは、資本主義社会における賃金労働者階級のことで、無産階級とも呼ばれる。雇用する側の資本家階級を指すブルジョワジーと対になった概念である。
あらすじだけをみると、いかにも共産主義思想が色濃く反映した作品のようだ。
この作品は1929年にプロレタリア文学の機関誌「戦旗」に発表され、評価を得た。
しかしその四年後、1933年、小林多喜二は特高警察に逮捕される。




