東京国立博物館に行ってきた(5)
800年前に運慶が作った彫像が、現代の私の目の前に当時の形のままで存在しているということにどこか不思議さを感じた。
博物館に展示されるような歴史的遺物としては書画などもあるのだけど、書画などはやはり紙が長い年月とともに劣化していくので、現代に残った遺物でも、掠れたり、汚れたりと傷んでしまっていることが多い。しかし彫像は、表面は劣化することはあっても、その造形は現代にもそのまま当時のまま残されている。その意味でも、私は歴史的遺物の中で彫像を見るのが好きだった。
以前も同じ東京国立博物館で「土偶展」が開催されたときは見に行った。
その時の土偶は縄文時代や弥生時代のものなので、それこそ今から2000年以上昔のものがそのままの形で残っていた。
私は運慶が作った3体の彫像を見ながら、「800年前、運慶はどのような思いを抱いてこの像(無著菩薩立像)を作っていたのだろうか」そのようなことを一人想像していた。
次に、この3体の彫像を取り囲むように置かれている四天王立像を見ていく。
持国天、増長天、広目天、多聞天。
多聞天は別名「毘沙門天」とも呼ばれる。
仏法を護る守護神、戦の神としても知られ、勝利をもたらすとされている。この毘沙門天は、戦国大名の一人、上杉謙信が信仰していたことでも有名だ。
彼らは武具をまとった神で、やはり外形も、その憤怒の表情も迫力がある。身にまとった衣の波打ちも、木の彫刻で表現されていた。
私はこれら7体の彫像を時間をかけて見ていき、そして特別5室を後にした。
特別展と言っても7体の彫像しかなかったので、おそらく時間にしては30分程度だったと思う。
だけど、きっとその30分は、私にとって意味のある30分だった。
「経験」は貴重だ。
「経験」がその人の視野を広げ、「経験」がその人の人生の深みを作り出す。そこに時間とお金をかけるだけの価値はある。
今後も気になる展示会があったら、積極的に行くようにしよう。




