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或る人のFIRE日記  作者: 鷺岡 拳太郎
2025年11月
345/367

話を聞いてくれる人(3)


「聞き屋」の常連客の一人、イオリ氏は、定期的に水野氏のもとを訪れては自分の話を水野氏に聞いてもらっている。








イオリ氏は心の病を抱えており、心療内科に通っていた。


仕事も長続きせず、自分に合った仕事を探している。気分が落ちると、生活費がなくなるまで散財してしまうことをどうしても抑えられないという。




映像に映ったイオリ氏は、女性のような格好をしながら、その声は男性のもので、どこか中性的な印象の人物だった。




彼は自分の中の絶望がどうしても抑えられなくなると、名古屋駅前に行って「聞き屋」の水野氏に自分のことをひたすら話すのだという。別に自分の話を肯定してほしいわけでもなくて、何かアドバイスが欲しいわけでもない。ただ、自分の話を聞いてほしかった。








「聞き屋」という自分とは全く関係のない第三者だからこそ、自分の本音を喋ることができるということもあるのかもしれない。そして、自分の中の空虚さを、自分の本心を誰かに話すことによって何とか埋めようとしていたのかもしれない。




自分の本音を誰かに話すことが難しいこの世の中には、「聞き屋」なるものにも一定のニーズもあるのだろう。




名古屋駅前で折りたたみ椅子に座り、自分のことをひたすら話し続けるイオリ氏の映像を見ながら、私はそのようなことを考えていた。








そして、きっと、「聞き屋」の水野氏も、自分が空っぽだからこそ聞き役に徹することができるし、そしてそれによって誰かの役に立てることで、自分自身の空虚さもそれで埋めようとしていたのかもしれない。




無意味で空虚な世の中を生きる一つの術として、「聞き屋」を行っているような気がした。








X(Twitter)で検索すると、水野氏は今も「聞き屋」を続けているようだ。




2022年の番組放映当時で5年間「聞き屋」をしているということだったので、現在では「聞き屋」を8年も続けていることになる。



挿絵(By みてみん)


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