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或る人のFIRE日記  作者: 鷺岡 拳太郎
2025年09月
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風呂場の修繕(3)


実家に着いたのは午後一時半くらいだった。




私と両親、三人で昼食を食べる。


その間も風呂の修繕について話したりしていた。








昼食を食べ終えると、両親はスーパー銭湯に行くための準備を始める。そして工事を行っている職人に二時間ほど外出する旨を告げてから、車に乗って出かけていった。


居間には私一人が残された。




家の外ではガス周りの工事をしていて、給湯器を古いものから新しいものに付け替えるための作業を行っている。時々、ガガガガという大きな音が居間にまで響いた。




ただし、その工事の手が止まると、部屋の中は急に静けさに包まれる。








誰もいない居間に私は一人、タブレットを見ながら過ごしていた。




なんだか不思議な感じがした。








私が実家を出たのはもう15年近く前のことだ。


私たち家族はもともと東京にあった社宅に暮らしていたが、私が5歳の頃に横浜にある一軒家に引っ越してきた。それ以来ずっとこの家で私は暮らしていた。




私がまだこの家で暮らしていたころ、当然、他の家族がみんな外出していて家には私一人ということは数多くあった。




いつもはうるさい家がひっそりと静まり返っている。


そのような空間が好きだった。


私一人が家にいる。その時間に何か特別なことをするというわけでもなかったのだけど、私はいつからか家族ともそれほど会話をかわさなくなっていたので、私の周りに「家族」という人がいるという状況がどこか息苦しかったのかもしれない。


だから、誰もいない一人だけの空間に、どこか開放感のようなものを感じていたのかもしれない。








15年前に実家を出てから、私は実家には何度も顔を出している。


だけどその間、この家に泊まったことはたったの一度もなかった。


全て日帰りで帰っていた。当然、その間は両親や姉妹、あるいは姉妹の家族が家にはいた。この家に私一人だけ、という時間は一度もなかった。




今回、急遽留守番をするということになり、15年振りにこの家に一人佇んでいた私の記憶は15年前に引き戻され、まだ私がこの家に暮らしていた頃の「開放感」を思い出す。




子供の頃の私が感じていたその「開放感」がどこか懐かしかった。



挿絵(By みてみん)


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