転職したときの話(3)
転職するうえで私は二つの目標を設定した。
一つ目は、「次ステップに進むための経験を積む」こと。
そして二つ目の目標は、「コンシューマー製品の設計をすること」だった。
私が新卒で就職した企業Aが主力としていた製品は、企業向けの製品となっていて、それまで私が企業Aで担当していたのも企業向けの製品の設計だった。
ただ、せっかく「設計」という仕事をしているのだから、どうせなら一般ユーザーが使うようなコンシューマー製品の設計をやってみたいと思っていた。
確かに企業Aでの仕事に限界を感じ、一日も早く「企業」という枠組みから離脱したいと願い続けていた私だったけれど、その時まで苦しみながらもなんとか企業Aで「設計」という仕事を続けていた。
職歴に空白は無かった。
最終的にはFIREという道に進む。
その思いは変わらない。
だけどFIREという道に進む前に、今までの「工学部機械学科卒という学歴」であったり、「企業Aにおける製品設計という職歴」という経歴を最大限活かした上で、会社という枠組みの中でしかできない、少しでも「私のやりたいこと」に近いことをやっておこうと思った。
一度会社という枠組みから離れて職歴に空白を作ってしまうと、企業Bへの転職なんて夢のまた夢の話だった。
そしてその「私のやりたいこと」とは、「コンシューマー製品を設計すること」だった。
この二つの目標を設定した上で転職活動を開始し、実際に企業Bの中途採用の面接では正直にその自分の思いを話した。
当然、話したのは二つ目の目標だけだった。
「将来的にFIREに進むために、一度転職を経験しておきたかった」
中途採用の面接で、そのようなことを言えるわけがない。
一つ目の目標については私は口をつぐむ。
私は二つ目の目標である「コンシューマー製品を作りたいから」という言葉を企業Bの面接官に訴え続けた。




