第二の人生の始め方(1)
少し前に、一本のドキュメンタリー番組を見た。
ある一人の男に密着した番組だった。
その男の生き方に何か考えさせられるものがあって、興味深く見ていた。
番組タイトルは、「第二の人生の始め方 グラスに響くメロディー」。
番組紹介には次のように書かれている。
「人並みの幸せを手にしたはずの52歳。
しかし2人の息子は別れた妻のもとにいて、田舎暮らしを楽しむつもりで購入した家は土台が傾いているのが現実。そんな彼が没頭するのが子どもの時に出会った楽器『グラスハープ』。
プロになる夢はかなうのか。汗と涙の日々を長期間、自ら記録。第二の人生を模索する人に元気を与えるドキュメンタリー」
登場するのは、52歳の一人の男性。
彼は妻とも離婚し、一人で暮らしている。
冴えない家で、冴えない毎日を送っていた。
そんなある日、子供の頃に「グラスハープ」という楽器を演奏している人を見て感動したことを思い出す。
自分もグラスハープの演奏者になろうと思いたち、それまでの仕事をやめてそのグラスハープの演奏者になるための挑戦の日々を送ることになる。
この番組を見て、私は「グラスハープ」なる楽器を初めて知った。
グラスハープは、グラスの縁を指でこすって音を発することで楽器として使用する。
まずワイングラスにそれぞれ異なる水位になるように水を注ぐ。それによってそれぞれのグラスの音階を変えていく。それらのグラスを自分の前に並べ、両手でいろいろなグラスの縁をこすっていくことで音楽を奏でていくのだ。
毎回、演奏の前に調音のための水位の調整が必要で、非常に手間のかかる楽器だった。
番組でもその演奏の様子は流れていたが、グラスハープは静かで澄んだ音を発し、その音には他の楽器にはない独特の響きがあった。




