小児集中治療室の日々(7)
番組ではカンファレンスの様子も放映された。
カンファレンスとは、対象の患者の治療に関わる各科の医師が集まり、患者の医療方針を話し合う場だ。
あるカンファレンスなどは、緊急で行われたのだろう、小児集中治療室の片隅で立ったままで行われていた。
「太郎」についてのカンファレンスも行われる。
打ち合わせスペースのような場所でスライドに「太郎」の現在の状況などを投影しながら、各科の医師が集まって治療方針を話し合う。
その中で、小児集中治療医が次のように話す。
「生きていける道が極めて細い感じがして、本当にその道があるのか」
「この子が1歳になっている道があるのか、実は疑問で」
「場合によって、緩和ケアを今の時点で考えてもいいかもしれない状況」
その意見に対して、「太郎」の腸の摘出手術を行った消化器外科の医師が公然と反対意見を述べる。
「その意見には僕は反対で、彼の状態は数週間前よりは明らかに良くなっている」
「数週間前」は、「太郎」の緊急手術を行った時期で、そのときは腸の壊死によって「太郎」は生死の境を彷徨っていたが、今はなんとかその命の糸を繋いでいた。
二人の医師の意見は真正面からぶつかった。
そのような医師同士の生々しい話し合いが、そのまま放映されていた。
そのカンファレンスでの話し合いの結果、「太郎」の両親に、今の「太郎」の状況をすべて正直に話すことになった。
小さな会議室のような場所に両親が呼ばれる。
その打ち合わせには小児集中治療医、消化器外科医が立ち会い、小児集中治療医が両親に説明を行った。
彼は正直に「場合によっては緩和ケアに移行することも考えたほうがいい」と伝える。
「太郎」の若い両親は、どんなにポジティブな態度を取っていようと自分の息子の厳しい状況は肌感覚としても感じていたのだろう。
二人は、小児集中治療医の「緩和ケア」の言葉に、打ちのめされたような、それでいて吹っ切れたような表情を浮かべていた。




