小児集中治療室の日々(3)
国立成育医療研究センターに入院する「ゆうせい」。
彼は9歳の子どもだ。
生まれつき肝臓に疾患を抱えており、母親から生体肝移植を受けたばかりだった。
様々な専門家が彼をサポートする。
例えば緩和ケア医。
患者の病気を治すことではなく、患者の苦しみを緩和することを目的とする医師だ。
緩和ケア医は、「ゆうせい」に、「何か、困っていることはない?」と尋ねる。
呼吸する筋肉すら弱ってしまっている「ゆうせい」は喋れなくなっており、看護師が目の前に掲げた文字盤をやせ細った腕と指でゆっくりと指し示していく。
彼は「ね」「る」と指し示した。
「ねる? 寝れないの?」
緩和ケア医の言葉に、「ゆうせい」は小さく頷いた。
緩和ケア医は「ゆうせい」に投与されている薬について確認する。その中の一つが睡眠に影響を与えていると判断して、その薬の種類を変えることにした。
そのかいもあって「ゆうせい」は再び眠れるようになった。
チャイルド・ライフ・スペシャリストと呼ばれる専門家も「ゆうせい」をサポートする。
チャイルド・ライフ・スペシャリストとは、子どもの病院での経験がよりストレスの少ないものとなり、安心して病気や治療と向き合っていけるよう心理社会的ケアを提供する専門職だ。
子どもが自分の病気と向き合い、主体的に治療へと関わっていけるように、それぞれの子どもに合った方法で、身体の仕組み、病気や治療について説明し、子どもの理解を支援する。
日本の国家資格ではないが、アメリカに拠点を置くチャイルドライフ協会が実施している認定試験を合格した者のみ、資格者として認定される。
現在、日本では49名のチャイルド・ライフ・スペシャリストがいて、そのうち4人が国立成育医療研究センターで働いているという。
チャイルド・ライフ・スペシャリトの女性は「ゆうせい」の傍に付き添い、治療の中で「ゆうせい」が苦しんでいるときなどは彼の細い手を握って「ゆうせい」を励まし続けた。




