生と死の境界線(5)
とうとうアイヴァンの死刑執行日が訪れる。
執行時間は、その日の午後6時だった。
ただし、テキサス州知事はアイヴァンの死刑延期を執行直前まで許可できる。
最後の望みをかけてポッドキャスターの男は事件の関係者に連絡を取り、当日においても、直前まで執行停止のために動き続けていた。
アイヴァンの事件の証言者(アイヴァンの恋人の弟)に電話をする。
自分の証言が間違っていたと改めて発言してもらうためだった。
しかし本人は電話には出ない。代わりに本人の家族が出る。ポッドキャスターの男は本人と話をしたいとその家族に伝えるが、最後まで証言者は電話には出なかった。
結局、「執行停止」という彼の願いが州知事に届くことは無かった。
アメリカでは2024年に25人の死刑が執行されているが、その中でテキサス州は死刑執行の数が全米で最も多いことで知られている。
テキサス州における死刑執行方法は薬殺刑だった。
番組では薬殺刑が行われる部屋の画像も紹介されていたが、緑色で塗装された壁に囲まれた小さな部屋で、中央には拘束具のようなものが取り付けられているベッドが置かれていた。
壁の一面にはガラス窓が設けられており、死刑執行の様子を外から見られるようになっている。
おそらく、被害者の遺族が執行の様子を見るためのものなのだろう。
執行となった場合は、シスター・プレジャンが付き添い、死にゆく彼の手を握ることになっていた。
アイヴァンの家族は、死刑執行室の近くにある親族のための施設で待機していた。執行の一時間前である午後5時まで、家族は電話で彼と話すことができる。
アイヴァンは電話で、自分の母親との最後の会話を交わした。




