冒険の本質(4)
K2西壁に挑戦し、そして遭難した平出氏と中島氏。
彼らはなぜ危険な山に登り続けるのか。
なぜK2西壁という、雪と氷と岩石だけが支配する絶壁に挑戦するのか。
番組では二人のインタビューの映像も放映された。
おそらく今回のK2西壁の挑戦の直前に、平地で撮影されたものだろう。
平出氏は、次のように述べる。
「山に挑戦しながら 弱い自分を成長させたい」
「僕は強い登山家になりたいわけじゃなくて 強い人間になりたい」
彼にとっては、困難に挑戦するということ、そしてその挑戦の過程で自分が人間として成長することが何よりも重要だったのかもしれない。
一方で中島氏は、次のような言葉を残した。
「登山も一種のアートだと思いますよ」
「山を見て美しい」
「その中に美しい絵を描きたい」
登山を一種のアートとみなす中島氏。誰も挑戦したことのない絶壁に登山ルートを少しずつ描いていく。そこに何か芸術的な感動を抱いていたのだろうか。
中島氏は自分が登る山の絵を、手書きで手帳に書くようにしていた。
実際に自分の目で見た山の姿を、写真を撮っているかのように細かく書いていく。
これまでに彼が描いた山の絵も番組では紹介された。
それらは全てとても精巧で美しい絵だった。そのような絵を描く中で、その山のイメージを自分の中で明確にしていくらしい。
彼は最後のアタックの前の空き時間を使って、K2西壁の絵も描いていた。
その絵も、山の様子が精巧に模写されていた。
彼は本当に登山を一種のアートとして捉えていたのかもしれない。




