冒険の本質(2)
平出和也氏と中島健郎氏。
今回、この二人が挑んだのはK2西壁だった。
世界で一番高い山は有名なエベレストで、標高8849メートル。
K2は世界で二番目に高い山だった。パキスタンと中国の国境に位置し、標高は8611メートルに達する。
そのK2の中で「西壁」は特に難所として有名らしい。
高所の登攀方法には「極地法」と「アルパインスタイル」という二つの方法がある。
極地法は大人数で組織的に登る方法で、ロープ、はしごなどを用いてルート工作を行いながら登る。一方でアルパインスタイルは軽量装備、少人数で短期間に登る方法となっている。
当然、極地法よりも、アルパインスタイルの方が難易度が高くなる。
K2西壁に関して、今まで極地法であれば登攀したグループがいくつかあった。1997年の日本山岳会東海支部、そして2007年にはロシア隊が登攀を成功させている。
しかし、アルパインスタイルでその西壁を登攀した人はいない。
アルパインスタイルのパイオニアであるポーランド出身の伝説的な登山家、ヴォイテク・クルティカも何度かその西壁に挑戦しているが、結局6800メートル付近までしか登ることができなかった。
二人は、そんなK2西壁に対して、二人だけのアルパインスタイルでの登攀を目指していた。
平出氏と中島氏は、そのK2西壁以外にも、未踏壁の登頂をいくつか成功させている。
2016年 ルンポ・カンリ北壁 7095メートル
2017年 シスパーレ北東壁 7611メートル
2019年 ラカポジ南壁 7788メートル
2022年 カールンコー北西壁 6977メートル
2023年 ティリチミール北壁 7708メートル
それらの登頂の中で「シスパーレ北東壁」「ラカポジ南壁」「ティリチミール北壁」については、優秀な登山家に送られる国際的な賞であるピオレドール賞も受賞していた。
二人は、そのような日本を代表する登山家だった。




