人体と機械の融合を求めて(2)
生体工学者ヒュー・ハーが医師と開発したという「AMI切断」という足の切断方法。
AMIとは「作用筋―拮抗筋インターフェース」の略語となっている。
通常、私たちが足や腕を動かす場合、二つの筋肉が連動して動く。
例えば人が肘を曲げる場合、上腕二頭筋が収縮し、反対側にある上腕三頭筋が伸びる。この動きは感覚フィードバックとして神経によって脳に伝達され、脳が腕の位置を認識するのに使用される。
しかし、事故や病気で足を切断する場合、従来の切断方法ではこの相対する筋肉の結合も切断されてしまい、二つの筋肉の連動が完全に失われてしまっていた。そうなってしまうと、足に残っている筋肉を動かそうとしても、脳がその制御をうまくできなくなってしまう。
それに対して「AMI切断」という切断方法は、足に残った二つの筋肉の端をふたたび結合する。
それによって二つの筋肉の連動を再現し、足に残された筋肉を脳で意識的に動かすことができるようになるのだ。
あとは、その筋肉の動きを義足に装着した電気センサーで検知し、その信号によって義足側の関節を動かす。そうすることによって、足に残された筋肉を動かすことで、義足側の関節を自分の思ったとおりに動かすことができる。
番組では、この「AMI切断」の実験を行う様子も映していた。
被験者はヒュー・ハーの友人の男性だった。
彼もヒュー・ハーと同じく登山家だったが、ロッククライミング中に事故で落下してしまい、足に大怪我を負ってしまう。そのときは足を切断することはなかったが、ただ、月日が経つごとにその残された足に強い痛みが生じるようになった。
そこで足の切断手術を受けることになった。
彼は、まだ確立した手法でもない「AMI切断」の実験のため、自分自身が被験体になることを申し出た。




