ALS嘱託殺人事件(4)
2019年11月に発生したALS嘱託殺人事件。
加害者である大久保氏は、2020年7月に逮捕される。
裁判で大久保氏は、殺害の事実自体は認めたが、
「嘱託殺人罪の適用は、林さんに『望まない生』を強いることになり憲法に違反する」
などとして無罪を主張した。
大久保氏は犯行動機について、「苦しみから解放されたいと願うのなら、かなえてあげられたら本人のためだと思います」と語り、また、殺害時の状況については、「(林さんが)文字盤を使って『死なせて』と。目に涙を浮かべて、うれしそうに……。自分がやるべきことは、やったのかなと思いました」と話した。
しかし、共犯となった山本氏は、大久保氏の歪んだ思想について裁判で次のように証言した。
「(大久保氏は)『高齢者が早く死ねばいい』としばしば口にしていました。殺人のノウハウを金にして、自分の理想とする世の中が実現すればいいと考えていた人です」
日本では安楽死は認められていない。
結局、大久保氏の主張が裁判で認められることはなかった。
一審の京都地裁では有罪判決が下り、大久保氏の弁護士は判決を不服として大阪高裁に控訴する。
大阪高裁は一審判決を支持し、大久保氏側の控訴を棄却した。
そして先日の2025年6月10日に、最高裁は大久保氏の上告を棄却する決定を下し、それによって大久保氏の有罪が確定した。
嘱託殺人以外にもいくつかの余罪もあり、刑としては懲役18年だった。
この事件には色々と考えさせられた。
被害者となった林氏は、ALSを2011年に発症している。
嘱託殺人で亡くなったのが2019年。そのときは51歳だったので、ALSを発症したのは43歳ということになる。2019年にはALSを発症して6年半が経過していた。
身体は全く動かなくなっているのに、意識ははっきりしている。
この病気は思考に影響を与えない。健常者と同じように物事を考えることができる。それなのに身体は動かないのだ。
それがこの病気の残酷な点だった。




