ALS嘱託殺人事件(2)
2019年に京都で発生したALS嘱託殺人事件。
事件に登場する人物は三人いて、一人目は被害者の林優里氏。
そして残る二人は、この事件の加害者として起訴されることになる、医師の大久保愉一氏と山本直樹氏。
大久保氏は厚生労働省で医系技官として7年半勤務した後、呼吸器内科の医師としていくつか病院に勤務していた。
2018年、宮城県名取市に、呼吸器内科、精神科、心療内科を専門とするクリニックを開業している。
大久保氏は、「高齢者を『枯らす』技術」というブログを開設しており、ツイッターでも、安楽死に賛同する投稿を頻繁に発信していた。
その中には次のようなものがある。
「ドクター・キリコになりたい」
「バレると医師免許なくなる。訴追されてプーになるリスクを背負うのに、ボランティアではやってられない」
今回のALS嘱託殺人事件では、大久保氏が主導的な立場で事件を起こすことになる。
そしてもう一人の被告である山本氏は、大久保氏とは医学生時代に知り合ったとみられる。
東京都内でED専門クリニックを経営していた。
周囲からは「医師というよりビジネスマンのようだった」「投資家から金を集めたり、健康飲料を売っていた」などの証言も出ている。
都内の医大を中退。しかしその後、海外の大学を卒業した形跡がなく、医師免許を不正に取得したと判断されて事件後に資格は剥奪されている。
山本氏は大久保氏に対して従属的な立場だったとされている。
被害者である林氏は、ALS発症から7年後の2018年4月にツイッターを始め、安楽死についての願望を発信するようになった。
そして2018年12月にSNS上で、林氏は大久保氏と接点を持つ。
安楽死を肯定するSNS上の議論の場で、林さんが自身の病苦についてつづった投稿を行い、それに大久保氏が返信したのが始まりだった。
大久保氏が「訴追されないならお手伝いしたいのですが」と安楽死を手助けする意向を示すと、やりとりはエスカレートしていったという。