裁判所ガイドツアーに参加してきた(12)
被告側弁護士から原告側代表者に対する反対尋問がが始まると、法廷の雲行きは俄かに変わり始める。
今回の事件の「本人尋問」を傍聴する前に私たちはガイド役の裁判官から事件概要を聞いていたが、その中で、原告側が有利な事件ではないかとその裁判官は私見を述べていた。
しかし反対尋問が始まると、原告側企業の「杜撰さ」が浮き彫りになり始める。
事件は、原告側企業が、被告側企業にアプリ開発を依頼したことから始まる。被告側企業は公募で選ばれた。
アプリ開発には「フロントエンド」と「バックエンド」があり、被告側の企業にはフロントエンドのみの開発を依頼していた。バックエンド側の開発については別の者(Nさん)が行うことになっていた。
原告側企業、被告側企業はその際に「基本契約」ということで契約を結んでいたが、その契約にはフロントエンドの開発しか含まれていなかった。
しかし、そのバックエンドの開発を行う予定のNさんが体調不良でそれができなくなり、困った原告側企業が被告側企業に尋ねたところ「バックエンドもできる」とのことだったので、口約束でバックエンドの開発も依頼した。その際にバックエンドに関しては追加の契約書を作成することはなかった。
また、アプリ開発を依頼するにあたっても詳細な「仕様書」を作ることもなく、「アプリの画面表示」についての簡単な資料を被告側の企業に提示してアプリ開発を依頼していたという。
アプリが出来上がり、原告側企業代表者、被告側企業代表者立会のもとテストフライトでそのアプリの動作を確認したところ、途中でフリーズしてしまい動作しなかった。
この点が事件の一つの発端となっている。
アプリが動作しなかったのだから、原告側企業は、被告側企業に開発費の前金として支払済みの150万円の返還を求めていた。
しかし、原告側代表者の本人尋問のあとに、被告側代表者の本人尋問になったのだが、その中で被告側代表者は次のように述べた。
「テストフライトの際にアプリが動作しなかったのは事実です」
「動作しなかった原因はその後、分かっており、数日で修正して動作するようになっています」
「修正したことは原告側企業には伝えています」
つまり、そのバグは簡単に修正されており、そのことも原告側企業に伝えているのに、原告側企業内でそのことがうまく伝わっておらず、原告側企業代表者の中では「アプリは動作していない」という認識のまま変わっていなかったようだ。
その結果、「アプリが動かないのだから、前金として支払ったお金を返せ」という訴訟を起こすまでになってしまった。




