裁判所ガイドツアーに参加してきた(10)
ガイド役の裁判官の指示に従い、私たちは「本人尋問」が行われる601号法廷に入った。
601号法廷は、先ほど「口頭弁論期日」を傍聴した507号法廷と全く同じ作りになっていて、ひどくこじんまりとした法廷だった。ただし今回は、原告人席、被告人席両方ともに、すでに数人の人たちが座っていた。
原告人席には弁護士と思われる50代後半くらいの男性が裁判官席に近い席に座り、その隣には、原告の企業代表者と思われる50代後半くらいの男性が座っている。
そして被告人席には弁護士と思われる50代後半くらいの男性が座り、その隣に20代後半くらいの男性が座っている。その若い男性の前にはノートパソコンが置かれていた。その二人のすぐ近くに、被告の企業代表者と思われる40代前半くらいの男性が座っていた。おそらく若い男性は被告企業の社員で裁判の書記として参加していたのだろう。
法廷では別に「速記官」がいるのだけど、被告側でも裁判の内容をノートPCで記録するのかもしれない。
被告の企業はアプリ開発の企業とのことだが、IT企業らしいなと思いつつ、彼らを見ていた。
しばらくして、裁判官が法廷に入ってくる。
私たちは先ほどの法廷と同じように、一度立ち上がり、裁判官に向かって一礼をした。
次に、裁判官に促されて、原告側、被告側の代表者が二人、証言台の前に座る。そして手元の紙を見ながら「宣誓」を始めた。
その宣誓が終わると、裁判官から次の三点が注意事項としてそれぞれの代表者に言い渡される。
「本人尋問は、横から弁護士から質問されたとしても、前を向いて、つまり裁判官の方を向いて答えるようにしてください」
「質問が終わってから答えるようにしてください」
「一問一答で、質問されたことに答えるようにしてください」
そしてようやく「本人尋問」が始まった。
始めに原告側の代表者が証言台の前に座る。
その横に原告側の弁護士が立ち、分厚いファイルを手にその代表者に質問を始めた。