裁判所ガイドツアーに参加してきた(9)
裁判官は裁判官席に座った。
原告側の代理人と、今回の事件について話を始める。
今回は「口頭弁論期日」といって口頭弁論を行う日を決めるだけだったので、特に尋問のようなものがあるわけではなく、ざっくばらんといった形で裁判官と弁護士は会話をしていた。
被告人席は空席だった。
どうやら被告人は弁護士を付けているというわけでもなく、また本人は遠方に住んでいて病気がちということで裁判所に行くのも難しいようだった。簡単な訴訟では、弁護士を付けない場合も多いらしい。今回の訴訟も「過払い金の返還請求」といった簡単な訴訟だったので弁護士を付けるまでもなかったのだろう。
原告側の弁護士も、「こちらとしても和解で終わらせたい。こちら側から被告に連絡を取って話をしてみる」と言っていた。
口頭弁論の期日について、まず裁判官から日付の提示があった。
ただ、始めに提示した日付では原告側の弁護士の都合が悪かったらしく、別の日に変えてもらっていた。
所要時間は10分もかからなかったと思う。
私の初めての「裁判傍聴」はそれで終わった。
ガイドツアーでは次に別の法廷に移って、別の訴訟の「本人尋問」を傍聴することになっていた。
私たちはガイド役の裁判官に従って、507号法廷を後にする。
そしてその本人尋問が行われる601号法廷に向かった。
601号法廷の前に着いたときは、まだ本人尋問は行われていないようだった。そのちょっとした待ち時間を利用して、ガイド役の裁判官が今回の訴訟の概要を説明してくれる。
今回の訴訟は次のような内容だった。
原告側の企業が被告側の企業にアプリ開発を依頼していたが、そのアプリが動作しない。開発費用は300万円で、すでに前金として半分の150万円は支払済みとなっている。
原告側はアプリが動作しないのだから、前金として支払った150万円の返還を求めていた。逆に被告側は、まだ未払となっている150万円の支払いを求めていた。
原告側が被告側に依頼していたのが、アプリの「フロントエンド」だけなのか、あるいは「バックエンド」も含んでいるのかが争点になっているとのことだった。
「フロントエンド」とは、そのアプリのユーザーインターフェースのこと。そして「バックエンド」とは、そのアプリの内部のシステムが動作することを示している。
依頼内容が「フロントエンド」だけだとしたら、ある意味ではアプリのユーザーインターフェースができていればいいので、そのアプリが動作することまでは要求されない。問題となっているアプリも「フロントエンド」については問題なかった。
原告側は「バックエンド」も含めて開発を依頼していたと主張しており、被告側は「フロントエンド」のみの依頼だったと主張していた。