自分の体が動かなくなる病気(3)
ALS患者である女性は、自分は気管切開を行って人工呼吸器を装着するべきかどうかについて悩む。
やはり彼女にも、他のALS患者と同じように、
「自分が家族の負担になるのではないのか」
という不安があった。
だけど、最後には人工呼吸器を装着することを決断する。
決めては、「もっと子どもたちと一緒にいたい。孫の顔を見たい」という思いだったという。
ドキュメンタリー番組では、人工呼吸器を装着した現在の女性の姿が映されていた。
身体は全く動かせない。
視線の動きを読み取る装置で、周りとはなんとかコミュニケーションを取ることができる。
人工呼吸器を気管に装着しており、定期的に痰を取り除くために気管の清掃を行わなければならない。その清掃はひどく痛く、苦しいらしく、訪問看護師に痰の除去をしてもらっているときの彼女はあまりに辛くて涙を流していた。
そこまでして、「生きる」という選択をした彼女は、現在どのように考えているのか。
番組の最後に、テレビ局の記者が彼女に、
「あのとき気管切開手術をして
今こうして生きていてよかったって思いますか?」
と質問した。
彼女は視線の動きでキーボードを打ち込む。
人口音声が、
「思います!」
と言葉に発した。
この番組を見ていて、「もし私だったら」とどうしても考えていた。
もしALSを発症し、延命するために人工呼吸器を装着するかどうかの判断を迫られたときに、私はどのような決断を下すのだろうか。
この番組で紹介された女性のように、
「思います!」
と言えるだけの強さが、自分の中にあるとは思えなかった。