人生で一番暗かった夜(11)
Yさんに電話をかけた日の夜、私はすぐに引っ越しの準備を始めた。
引っ越しまでにやらなければならないことは山のようにある。
悩んでいる暇も、躊躇している暇も、自分の過失を悔やむ暇も無かった。引越し予定日は突然一週間後に設定され、私はその締切に向けて、自分の感情を殺してでも引っ越しに向けての行動をしなければならない状態に追い込まれていた。
まず、電気、水道、ケーブルテレビ(インターネット)などの手続き関連を進めることにした。
同じマンション内の別の部屋に引っ越すといっても、住所変更にはなる。その住所変更のために、電力会社、水道局などに別途連絡して手続きをする必要があったのだ。それをしないと、新しい部屋に移ったとしても電気も水道も使えない。自分のこと(部屋の片付け、荷物の梱包)よりも、それらの手続きを優先して行わなければならなかった。
平日の日中、仕事を抜けて、電力会社や水道局などに電話をかけ、住所変更の連絡をする。
そして家に帰った後は、長時間労働で疲れ切った身体にムチを打ち、深夜まで部屋の片付けと梱包を行った。
しかも、私の住んでいた部屋は水道の元栓を閉じられていた。
もともとは給水管や排水管からの水漏れが疑われたので元栓を閉じるという処置をされていたのだけど、私がYさんに私の過失について電話をした後も、Yさんは、「引き続き元栓は閉じたままで、その部屋では水は使わないでください」と私に要求した。
私は水を使う作業(洗顔、トイレ、風呂など)は、新しく移る部屋にわざわざ行って、それらを行わなければならなかった。
会社における長時間労働。
深夜における、短期間での引越し準備。
水周りの作業については、そのたびに、自分の部屋とは別の部屋まで行く必要があったこと。
これらの三重苦の中、私はその一週間を過ごした。