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或る人のFIRE日記  作者: 鷺岡 拳太郎
2025年03月
120/311

人生で一番暗かった夜(10)


電話口のYさんは引き続いて、次のようなことを言った。




「引っ越しの費用は、◯さん(私)にもってもらいます。引っ越しのサカイは水曜日までに費用の振込みが必要となっているので、振込用紙は今日、ポストに入れておきます」








前日の日曜日、Yさんが私に「引っ越し」を要求した時は、まだ排水管からの水漏れと不動産会社は考えていたので、その引越し費用は不動産会社でもつという話になっていた。


それが、排水管からの水漏れではなく私のただの過失(風呂の水を溢れさせてしまった)だったので、その引越し費用は私がもつべきだと不動産会社は考えたのだろう。




私は当然拒絶なんて出来なかった。


私は小さな声で「分かりました」と言うのがやっとだった。




この電話によって、私が部屋を引っ越ししなければならないことが決定した。








時系列を書くと次のような形になる。








10月18日(土)深夜


私が不注意で風呂の水を溢れさせ、台所の床を水浸しにしてしまう。




10月19日(日)早朝


不動産会社の担当者Yさんが、水周りの業者と一緒に私の部屋を訪れる。不動産会社から別の部屋への引っ越しを要求される。




10月20日(月)朝


不動産会社に電話をかけ、私の過失について話す。私が引っ越しをしなければならないことが決まる。




10月26日(日)


引越し予定日。








つまり、一つの不注意で風呂の水を溢れさせた日の、そのたった一週間後に、突然部屋を引っ越ししなければならないという事態に陥ってしまったのだ。




引っ越しの準備をする期間は一週間しか無かった。


しかもその大部分は平日。


休日は、引っ越しの前日の土曜日があるだけ。




私は、平日、毎日午後10時までの長時間勤務を強いられる中で、夜遅く家に帰ってから引っ越しの準備をしなければならなかった。








本当にそのような事が可能なのだろうか。


自分の体はもつのだろうか。




Yさんとの電話を切った私は、その事実を目の前にして暗澹たる思いに襲われていた。


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