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或る人のFIRE日記  作者: 鷺岡 拳太郎
2025年03月
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人生で一番暗かった夜(4)


風呂から上がると、携帯電話に留守電が一件入っていた。




着信履歴を見ると二件あった。一件は知らない番号。そしてもう一件は父からだった。留守電は父からのものだった。


その留守電には、「不動産会社から電話があって、水漏れの件で確認があった」と吹き込まれていた。おそらく、不動産会社には緊急連絡先として実家の電話番号を通知していたので、まず私の携帯電話に電話をかけて繋がらないので、緊急ということで実家に電話をしたのだろう。




私は急いで不動産会社に電話をかけた。


水漏れの件で確認したいので、これから家に伺うとのことだった。




引き続いて父にも電話をかけた。


「水漏れに関しては、こちらで対応する」と伝えた。両親は私の電話が繋がらないので、どうしたのだろう、と私の家に向かうために家を出る直前だった。








私の胸の中の「嫌な予感」がどんどん大きくなっていった。




風呂の水を出しっぱなしにして、キッチンの床を水浸しにしてしまった。おそらくその水が階下にも一部流れて、階下の住人が「水漏れが起きている」と考え不動産会社に電話をした。そして不動産会社がその水漏れの確認をするために日曜日の早朝に私の家を訪れることになった。




私はそれが「水漏れ」でもなんでもなく、私の不注意による「事故」だと分かっていた。給水管や排水管に水漏れが発生しているわけではない。だけど不動産会社はそれを「水漏れ」として考えていたのだ。








午前8時半になって、不動産会社の担当者が水周りの業者を引き連れて、私の家を訪れた。


その頃にはキッチンの床は水をきれいに拭き取ったこともあり、一見してそこが水浸しになったとは分からなくなっていた。








担当者は私に、


「昨日は何か異常は無かったですか?」


と尋ねた。




その時に、「実は、不注意で風呂の水を出しっぱなしにしてしまい、キッチンの床を水浸しにしてしまいました」と正直に言えばよかったのかもしれない。




だけど、目の前の事態に完全に気が動転していた私は、「特にありません」と答えてしまっていた。




その「嘘」が、後になって私を大いに苦しめることになる。


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