きこえるせかい きこえないせかい
ある、ドキュメンタリー番組を見た。
民放が作成した番組で、タイトルは「きこえるせかい きこえないせかい」。
両親と、その三人の幼い娘。
両親は聴覚障害によって耳が聞こえず、そして三人の娘は耳に障害をもっておらず、健常人と同じように音を聞くことができる。
彼らの日常を追った三十分の番組だった。
その番組の中で、「CODA」という言葉を初めて知った。
CODAとは、聴覚障害のある親から生まれてきた聞こえる子どもたちのことで、全国に約2万2000人いるらしい。
私の周りに聴覚障害の人はいなかったので、「CODA」という存在なんて全く知らなかった。
だけど冷静に考えてみれば、そのような存在がいてもおかしくはなかったし、いて当たり前の存在でもあった。ただ「自分の身近にいない」という理由だけで、私がその存在に気付いていないだけだった。
幼いながらも手話を憶え、両親と手話で会話をする娘。
小学生低学年の長女は、カメラに向かって次のように言った。
「聞こえない親から生まれたから
聞こえない世界と聞こえる世界の間にいる」
幼い口から発せられたとは思えないくらい、重たい言葉だった。
おそらく彼女なりに色々と苦労をしながら、その二つの世界を生きてきたのだろう。
ドキュメンタリー番組は、このように自分の知らない世界を知ることができる貴重な媒体の一つだった。
本は本としての良さがあり、映像媒体には映像媒体としての良さがある。
私は本を読むだけではなく、映像媒体もできるだけ見るようにしていた。