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第8話 廿七日、②
といひける間に鹿兒の崎といふ所に守の同胞、また他人これかれ酒なにど持て追ひきて、磯におり居て別れ難きことをいふ。
※といひける間に
(前話で)土佐で亡くした娘を想い、歌を詠み合っている間にも
※鹿兒の崎
高知市大津鹿兒。鹿兒山が見える。船戸から約1キロの距離とされている。
(舞夢訳)
土佐で亡くした娘を想い、歌を詠み合っていたのですが、(船も既に桟橋を離れてしまっていたのですが)鹿兒の崎と言うところまで、新任の国司様の兄弟の方々や、また別の人々が、いろいろ酒とか料理を持って追いかけて来るのです。
磯におりて、「別れるのがつらい」と、呼びかけて来るのです。
土佐で亡くした娘への感傷に浸っている暇もなく、貫之一行は、新任国司の兄弟や知人たちに追いかけられてしまう。
磯におりて来て、酒と料理を持って来て、お別れするのが辛い、再び送別会をしましょう」と、大声で言って来る。
貫之も、これでは、旅がなかなか進まない。