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第72話 八日、
(滞在地)鳥飼の御牧
(原文)
八日、なほ川上りになづみて、鳥飼の御牧といふ辺に泊まる。
今宵、船君、例の病起りていたく惱む。
ある人鮮らかなる物持て来り。
米して返りごとす。
男ども密にいふなり。
「飯粒て、もつ釣る」とや。
かうやうのこと所々にあり。
今日節忌すれば魚不用。
※鳥飼の御牧
摂津国島下郡(現在の大阪府摂津市鳥飼)に設置された牧で、平安時代に左右馬寮が管理していた近都六牧の一つ。淀川西岸で、川と新幹線に挟まれた淀川新橋」と鳥飼大橋の間の堆積地。
※鮮らかなる物
地元の漁師が釣った鮮魚(おそらく鯥)、他に野菜等の差し入れも、あったかもしれない。
※「飯粒て、もつ釣る」
「海老で鯛を釣る」と、ほぼ同じ意味。
(舞夢訳)
八日になりました。
今日も、昨日同様に、川を遡ることには苦労しました。
鳥飼の御牧のあたりに泊りました。
この日の夜に、船君(紀貫之)は、いつもの持病が出て、ひどく苦しみました。
(地元の)ある人が、新鮮な魚などを持って来てくれました。
お米を、お返しと、しました。
男たちが、陰口をたたいています。
「飯粒で、鯥を釣っている」
ただ、このようなことは、いろんな場所であったことです。
ただ、今日は節忌なので、魚に関しては無駄となりました。




