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第58話 二日、三日
(滞在地)佐野浦
(原文)
二日、雨風止まず。
日一日、夜もすがら、神仏を祈る。
三日、海の上昨日のやうなれば、船出ださず。
風の吹くこと止まねば岸の波返る。
これにつけて詠める歌、
「緒をよりて かひなきものは 落ちつもる 涙の玉を ぬかぬなりけり」
かくて、今日暮れぬ。
(舞夢訳)
二日になりました。
雨と風が止みません。
一日中、夜も通して、(航海の安全を)、神仏に祈り続けました。
三日になりました。
海の上は、昨日と同じ状況で、船は出しません。
風は止むことがなく吹き付け、岸には波が寄せては返っています。
この様子を見て、(紀貫之が)歌を詠みました。
(麻)糸を縒ってつむいでも、全く無駄なこととなりました。
(この進みが遅い船旅の苦しさに耐えかねて)あふれ続ける涙の玉を通すことなど、できないのですから。
そのようなことで、今日も一日(無為に)過ごしてしまいました。




