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第52話 二十九日、②

(行程)土佐の泊に向かう


(原文)

ある女の書きて出せる歌、

「おぼつかな 今日は子の日か 海女ならば 海松をだに 引かましものを」

とぞいへる。

海にて子の日の歌にてはいかがあらむ。

また、ある人の詠める歌、

「今日なれど 若菜も摘まず 春日野の わが漕ぎわたる 浦になければ」

かくいひつつ漕ぎ行く。


(舞夢訳)

ある女の人が、色紙に歌を書いて、皆に見せました。


本当にそうなのですか?今日が子の日ということならば、私が海女でしたら、海に潜って、せめて(小松の代わりに)、海松でも摘むでしょうに。


海の上で、子の日の歌は、少々場違いで、いかがなものでしょうか。

それでも、また別の人が、歌を詠みました。


確かに今日は子の日になりますが、若菜など摘むことはできませんよ。

若菜を摘むべき春日野は、私たちが漕ぎ渡って行く海辺にはないのですから。


と、そんな歌を歌い合いながら、船は漕ぎ進みます。

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