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第38話 十八日、③

(滞在地)室津


(原文)

この歌どもを、少しよろしと聞きて、船のをさしけるおきな、月日ごろの苦しき心やりに詠める、

「立つなみを 雪か花かと 吹く風ぞ よせつつ人を はかるべらなる」


この歌どもを、人の何かといふを、ある人の又聞きふけりて詠める。

その歌詠める文字、三十文字あまり七文字。

人皆えあらで笑ふやうなり。

歌主いと気色悪しくてず。

真似べどもえ真似ばず。

書けりともえ読みすゑがたかるべし。

今日だに言ひ難し、まして後にはいかならむ。


※三十文字あまり七文字

 和歌は本来三十一文字であるべきなのに、三十七文字に詠んだ。


(舞夢訳)

これらの歌については、「少しはマシだ」との評判が聞こえて来たので、船主の翁が、土佐国府出発以降の月日の苦しい心をやわらげようと、詠みました。


立つ波を、雪や花のように見せて吹く風こそが、吹き寄せを繰り返しては、みんなを騙しているようだ。


今まで詠まれて来た歌を、人々があれこれ言っているのを、また別の人が聞きつけて、歌を詠みました。

ただし、その歌は、詠んだ文字数が、三十七文字でした。

その(常識外れの)歌を聞いてしまった人たちは、笑いをこらえきれません。

歌を詠んだ人は、笑われてしまって気分を害しています。

でも、詠まれた和歌をもう一度詠もうと思っても、(変な歌なので)うまく詠めません。

もちろん、文字にしようとも思いはしたのですが、結局、文字にしたところで、再び詠むべき価値もないのです。

詠まれた直後の今日でさえ、再び詠みにくいのです。

ましてや、今後は、どういうことになるのでしょうか。



誰が「三十七文字」の歌を詠んだのか。

おそらく和歌そのものに詳しくない、田舎の人か。

紀貫之一行(京都人)が歌を詠み合っているのを聞きつけて、「都人に負けるものか」と、いい加減な歌を詠み、「三十七文字」になってしまった。

本人は、和歌そのものの理解が薄いので、「三十七文字」でも立派だと思い込んでいたら、都人からの「嘲笑」を浴びてしまって、気分を悪くして「都人」を怨む。


貫之からすれば、「身の程知らずの田舎者」が詠んだ歌など、記録するのも、馬鹿馬鹿しい。

それほど田舎の人を憎んでいたのか、少々大人げない気もするが、こういう書き方をするのも、現代に残る「京都人のイケズ」なのだと思う。

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