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第27話 十一日、③

(行程)羽根から室津に向かう船の上


(原文)

この羽根といふところ問ふ童のついでにぞ、また昔へ人を思ひ出でて、いづれの時にか忘るる。

今日はまして母の悲しがらるることは、下りし時の人の数足らねば、古き歌に「数は足らでぞ帰るべらなる」と言ふことを思ひ出でて人の詠める、

「世の中に おもひやれども 子を恋ふる 思ひにまさる 思ひなきかな」

と言ひつつなむ。


※昔へ人

 昔の人。紀貫之夫妻が土佐の国で亡くした子供のこと。

※数は足らでぞ帰るべらなる

 古今和歌集巻第九羇旅歌412

 このうたは、ある人、男女もろともに人の国へまかりけり、男まかりいたりてすなはち身まかりにければ、女ひとり京へ帰りける道にかへるかりの鳴きけるを聞きてよめる、となむいふ


題知らず

よみびとしらず


北へ行く 雁ぞなくなる 連れてこし 数はたらでぞ 帰るべらなる


※この歌は、ある人がいうことには、「ある人が他国に、夫婦ともに下ったけれど、夫が到着直後に亡くなってしまったために、妻が一人で京の都に帰る途中の道で、雁が鳴いているのを聞き、詠んだ」とのことです。


北に向かう雁が鳴いている。

一緒に連れて来た仲間が足りなくなり、探しながら帰るからなのだろうか。



(舞夢訳)

(紀貫之様は)羽根の地名のことを聞いて来た子供の顏を見ると、つい、(土佐の国で亡くした)幼い娘のことを思い出してしまうのですが、本当にいつになったら、忘れることができるのでしょうか。(その離別の悲しみは、心に重くのしかかっているようです)

そして今日は特に、母君が(亡くした娘を想い)悲しがっておられます。

古い歌にはなりますが、「数は足らでぞ帰るべらなる」を思い出したのでしょうか、


「世の中に おもひやれども 子を恋ふる 思ひにまさる 思ひなきかな」

世の中には、様々な思いがあるのですが、子供を愛しく思う(親の)思いに勝るような強い思いがあるのでしょうか。


などと、しみじみ語っておられます。


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