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こんびに!?(1)

「はぁ…はぁ……どこまで続くんですか、この道」


 うるるは拾った木の枝を杖のようにして、今にも重力に負けそうになる身体を支えながら言った。


「うるるちゃん、まだ出発してから1時間も経ってないからね!?ユウ先輩だって文句言わずに歩いてるんだし、もう少し頑張ろう」


「うるる、限界を超えろ。未来はいつでも限界の一歩先にある」


 厳しい叱咤の声がこのみの背中越しに響く。涼しい顔をするユウとは対照的に、背負っているこのみは息も絶え絶えの状況であり、つい先ほど始まった冒険は既にクライマックスの様相を呈している。


「ちょっと、ユウ先輩、何やってるんですか!?このみ先輩も甘やかしちゃダメですよ、教育に良くありません!!」


「いやぁ、足挫いたかもしれないって言うからさ、少しだけね。それにほら、アールピーも言ってたでしょ、進めば道は開けるってさ。だから、とりあえず行ける所まで行こう」


 このみは力なく笑うが、額には汗がにじみ、足取りは重い。


「無理しすぎですよ!!ユウ先輩も早く降りてください!!このままじゃ、街に着く前に全滅です、どこか休める場所を探さないと」


「あっ、なら、コンビニがいいな。からあげクン増量してるはずだし」


「じゃあ、私はキャラメルフラッペで。財布カバンに忘れてきたから、ノノカ千円貸して」


「カバンなら持ってるでしょ。もう私が奢ってあげるから、気軽に後輩にたからないの」


「皆さん疲労で認知が歪んでますけど、ここは異世界です、私達は異世界転生したんですよ!!辛い現実から目を背けちゃダメです、向き合いましょう目の前にある苦難と!!私達が探すべきは街であって、あるはずのないコンビニじゃないんです!!」


「いや、だから、あそこのコンビニ」


「ユウ先輩、いつまで夢みたいなことを………えっ?」


 ユウが指し示す方向に白と青で彩られた見覚えのある建物が見える。


「ノノカちゃん、あれってコンビニ………だよね?」


 このみは自分の目を疑うように、頬をつねりながら同意を求める。


「ローソン………ですね。いや、絶対おかしいですって、なんで異世界にコンビニがあるんですか!?しかもローソンが!!」


「ノノカ、異世界だからってコンビニがないという偏見、良くないと思う。アップデートしてこう、常識」


「そうですよね、文明の進んだ異世界だってあってもおかしくないです。異世界といったら中世ヨーロッパで電気もWi-Fiもない世界だなんて、単なる固定観念です。異世界に住む野蛮人の人達に失礼ですよ。からあげクンだってコーラだって、なんだってある異世界。私の壮大な異世界引きこもりライフが今始まるんです、えへへっ」


「で、でも、アールピーさんは剣と魔法のファンタジー世界だって言ってましたよね?この世界観で剣とか持ってたら100%銃刀法違反で逮捕ですよ!このみ先輩もそう思いますよね、ねっ?」


「あー、私はゲームとか詳しくないから分かんないけどさ、実際に目の前にあるものは否定できないかな。剣と魔法とコンビニのあるファンタジーなんだよ、きっと」


「そんなファンタジーないです!!」


「ノノカ、意固地。入らないなら私達だけで異世界コンビニライフを堪能する。うるる、私はスイーツを確保するから、ホットスナックは任せた」


「はいっ、からあげクン買い占めときます」


「あっ、ちょっと!!」


 ノノカが止める間も無く、二人はコンビニに飲み込まれていった。


「行こう、私達の世界のコンビニとは少し違うかも知らないけどさ、こっちの世界の人と話せるだけでも大きな収穫になるよ」


 このみの誘いにノノカは少し不安気な表情を浮かべつつ従う。自動ドアを通ると、鼻腔をどこか懐かしさすら感じる匂いが刺激し、視界には昨日まで幾度となく通った光景が広がっていた。


 そう、そこは紛れもなく、ノノカの知っているローソンそのものだった。

書いてたらファミチキ食べたくなってきました…

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