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すてーたす!(3)

「アールピーさん、まさか私達って本当にレベル1だったりとか………ははっ、そんなことないですよね、すいません、変なこと聞いちゃって」


 ノノカは申し訳なさそうに手を合わせ笑みを作ったが、その眼差しは疑念に満ちている。


「ふぅ、転生直後で混乱しているタイミングなのに、一方的に話してしまって悪かったね。そんな中でも、この契約書にサインした通り、自主的に、そう、あくまで()()()()『ゴッドブレス』に参加してくれる気になって非常に嬉しいよ。うん、サインしてるからね、サインしちゃってるからね、誰がどう見ても正当な契約だ。まだ心の整理が出来ていない部分もあるとは思うけれど、ボクは確信している。君達ならきっと襲い来る幾多の困難を乗り越え、番組を成功に導いてくれるとね。というわけで、名残惜しくはあるが、ボクは一旦編集の仕事に戻るから、後は君達で頑張ってくれ!!」


「あっ、待てっ、この詐欺師っ!!」


 逃がすまいと手を伸ばす少女達を尻目に、アールピーはするすると側にある木に駆けのぼり、枝の上で大きくひとつ欠伸をした。


「最後にひとつ、お詫びとして冒険のコツを教えておくよ。君達はボクが事前に示唆した通り、レベル1、つまりこの世界の赤ん坊と変わらない強さで転生している。平均的な成人女性で5レベル、成人男性で10レベル、ある程度訓練を施された兵士で20レベル、それなりに名の通った冒険者で30レベルというのが目安だと言えば、レベル1のままでいることが如何に危険か分かるかな」


 そこまで言うと、アールピーは枝の上でゴロリと転がり、硬い樹皮に柔らかな背中を繰り返し擦りつけた。


「そ、それじゃあ、無双どころか、雑魚雑魚カーニバルじゃないですか。あぁ、せっかく完全無欠の天才清楚系美少女として生を受けたのに、この世界の原住民に掴まって、村に軟禁されて、その弱々しさとそれを補って余りある愛らしさのせいで、女神として崇められちゃうんだ。そして強制的に一生何不自由ない引きこもり生活を送らされちゃうんだ………あれ、その世界線も悪くないかも………」


「うるるちゃん、楽観的すぎ!!」


「ははっ、それくらい図太い方が頼もしいな。だけど心配しなくていいよ。序盤は君達が特定の行動を取るごとに一気に経験値が貯まる仕組みになっていて、すぐにレベルアップしていくんだ。加速度的に成長していく爽快感を味わってほしいから、レベル1で転生させているというところもあるからね。つまり………」


 そこで言葉を区切ると、トコトコと細い枝の先まで進み、弓なりになった枝をジャンプ板のようにして跳躍し、タッと地面に降り立った。


「行動こそが未来を切り開く唯一の手段というわけさ。恐れることなく自分の進みたい道を進むといい、ボクはいつでも君達を見守っているからね。困ったらいつでも呼んでくれ………まぁ、番組の都合上どのタイミングで現れるかはボク次第だけど。それでは、幸運を祈るよ」


「ちょっと、まだ聞きたいことが………」


 このみの言葉が届くよりも先に、アールピーは最初から存在しなかったかのように忽然と消え、後には静寂と少女達だけが残された。

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