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ほうしゅう!

「こ、これって、死んだんですよね………」


「そう………みたいだね」


 うるるとこのみは物言わぬ躯となったドラゴンの鱗を交互につつく。


「えへへっ、私達って、もしかして凄く強かったりします?」


「うるる、愚問。強靭、無敵、最強。異世界転生といえばチート。異世界転生といえば無双。見える『あれ?また何かやっちゃいましたか?』と嘘くさいキョトン顔を浮かべながら、チヤホヤされる私達の姿が!!」


 ユウはピンと指を立て、上空に突き上げる。


「なにそれ」


「サムネ用の勝利ポーズ。使用許可は出すけど、1再生につき1円支払うこと」


「がめつくないかい!?まぁ、記念すべき初戦が勝利で終わってよかったよ。グループによっては力に気づく前に逃げてしまって、番組にならないケースもあるからね………後さっきのポーズ使わせてもらうよ」


「なんか拍子抜けしちゃいましたね。これだけ強ければ全然怖くないし、心配して損しちゃいました」


 ノノカはそう言うと、力こぶを作るような仕草を作る。


「この調子ならすぐクリア出来そうです。視聴者さんに見られてるのはちょっと恥ずかしいですけど、パパっとクリアして現世に戻って………あれ、私達死んだんでしたっけ、そうなるとこの番組が終わったら………」


「良いところに気づいたね。戦闘も終わって初回放送の見せ場は作れたことだし、『ゴッドブレス』のクリア条件と君達への報酬について説明しよう」


 先ほどまで緩んでいた雰囲気が俄かに引き締まり、少女たちは一様に緊張した表情を浮かべる。


「『ゴッドブレス』をクリアするためには2つの条件がある。一つは視聴者数を維持すること。これはクリア条件というより、番組の継続条件だね。1話につき平均100万再生、これを下回ると番組は強制終了になる」


「100万再生!?」


「一見途方もない数字に見えるけれど、君たちが思っている以上に、神界には多くの神が住まわれている。『ゴッドブレス』は神界でも屈指の人気を誇る長寿番組だ、過去にこの条件を下回って強制終了になったケースは3割程度さ。まぁ、参加者側にとっては厳しい条件に思えるかもしれないけどね」


「3割も………それに強制終了ってことは………」


「残念ながら君達は現世での結末どおり死を迎える。さっきも言ったように、既に死んだ命を番組のために転移させているだけだからね。番組の終了は君たちの人生の最後でもある、これはよく覚えておいてくれ」


 このみが首を縦に振り、それに倣うようにノノカとうるるも頷く。


「もう一つの条件は、既定のクリアポイントを達成することだ」


「クリアポイント?」


「君達には転移先の世界で、番組が指定したクエストや隠されたシークレットミッションに挑んでもらう。そうして積み上げたポイントが累計で10,000を超えた時、晴れてクリアによる番組の円満終了となるわけだ」


「10,000って、いったい何個ミッションをクリアすればいいの?」


「数値が大きいせいで達成が難しいように思えるけれど、ミッションの中には『世界を支配している魔王を倒す10,000ポイント』のように、それだけでクリアできるような物もあるからね。概ね、君達が『英雄』と呼ばれる存在になれれば、クリアだと思ってもらった構わないよ」


 アールピーは仰向けになり、無防備に腹を見せながら、それが簡単なことであるかのように言ってのける。


「あの…過去にクリアできた人達って………」


「報酬。報酬が知りたい。それ次第でだいぶやる気が変わってくる。ねっ、うるる」


「あっ、はい、とりあえず1000兆円ほしいです…」


 ノノカの言葉を遮るようにユウは質問し、うるるがそれに乗る。


「報酬もクリア条件と同じく2つある。ひとつは完全に無傷な状態での復活。バスの滑落事故という結果を覆すのは少々厄介だけれど、君達を生き返らせる程度のことは神の御業であれば容易だからね。生存が絶望と思われた滑落事故から奇跡的に無傷で生還できるわけだ、しばらくは日本一幸運な女子高生としてワイドショーを騒がせることになるだろうね」


「よかった、元の世界に帰れるんだ………」


 ノノカは肺を破裂させそうなほど吸い込んでいた息を全て吐き出し、胸を撫でおろした。


「もう一つは人気投票で1位だった者の特権、ひとつだけ望みが叶えられる権利だ。それこそさっき言っていた1000兆円ほしいでも構わない。最低限の認識改変もサービスでつけるから、正当な理由によって大金を得た状態でバラ色の人生を送ることが出来るはずさ。まあ1000兆円ともなるとトラブルに巻き込まれて不幸になる可能性が高いから、数百億円程度に留めておくことをお勧めするけどね。さて、これで大体説明は終わったかな。これから君達には正式に『ゴッドブレス』への参加契約を結んでもらう。ボクが説明した内容を聞いて、参加したいということであればこの契約書にサインしてくれるかな」


 アールピーはそう言うと空間の狭間に手を突っ込み、上等な羊皮紙に真紅の文字で刻まれた契約書を取り出し、羽ペンとともに少女たちの目の前に置いた。


「あ、あの………」


「なんだい?」


 アールピーは何か言いたげなノノカに天使の笑みで応える。

「人気投票ってなんですか?」


 ノノカの一言に時間が止まる。

 アールピーは一度首を傾けウーンと唸ると、やがて台座に座り直し、姿勢を正した。


「たいした話ではないよ。番組を盛り上げるために定期的に人気投票があるんだ。その順位に応じて番組終了時に待遇にちょっとした差異が設けられる。それだけだよ」


「ちょっとした差異って………1位の報酬以外にもなにかあるんですか。ひょっとして最下位には罰があるとか」


「聞きたいかい?どうせ君達には番組に参加するか、死以外に選択肢はないのだから、いまデメリットに目を向けるのは賢い行動だとは思えないけどね。ただ聞かれた以上は答えるしかなさそうだ。君の推測通り、1位に報酬があるのと同じく、最下位には罰がある。なにも怯えることはないさ、死刑になるわけでも拷問されるだけでもない。ただ『元の世界に戻れない』それだけだよ」


「えっ、それって………最下位の子だけ、異世界に取り残されるってこと…ですか?」


「悪く捉えればそうとも言えるかな。異世界に取り残される、それは事実だ。ただ異世界であっても一度失った人生をやり直せるという意味では、なんら罰ではないと思うけどね」


「そっ、そんな!!せっかくクリアして、みんなで帰れるって時に………」


「ヤバい!!」


 突如ユウが何かを思い出したかのように叫び、周囲の視線が一斉にユウに集まる。


「今週の歌番組、見たいアーティストが出るの忘れてて録画してない。親は機械音痴だし、絶望的状況。クリアしたら報酬にプラスして録画もお願いしたいけど問題ない?」


「………あぁ、それくらいであればボクの権限で上乗せ可能だね」


「死んだはずなのに、いろいろ願いが叶って超お得な企画。この波乗るしかない。ノノカは何にする、クリア報酬。多分私が1位だから無縁だと思うけど」


「私は………お願いしたい事がありすぎて、悩んじゃいます」


「じゃ、じゃあ、私は自宅警備が正式な職業として認められる世界がいいです………ついでに時給5000円くらいで」


「私は瞬間移動の能力とか貰っちゃおうかな、世界中どこでも旅行し放題、円安でも怖くないよ。移動中に崖から落ちることもないし、ねっ!!」


 このみはクルリと一回転したかと思うと、ポケットに入れていた鼻輪のスマホリングを片目に当て、モノクルのようにクイッと上下に動かす。


「なんですか、それ、このみ先輩に知的クールキャラは似合わないですよ」


「なっ!!」


「ノノカ、辛辣」


「で、でも、確かに鼻輪リング買って喜んでる人が、知的な雰囲気出しても滑稽かも…へへっ」


「もうなんなのよ、寄ってたかって!!」


 このみがわざとらしく頬を膨らませると、4人は声をあげて笑った。

 少し無理をしたその笑い声には、不安よりも多くの希望が込められているように聞こえた。



******************************************************************

1コメ神)今日も安定の1コメ!!

2)ほっこり

3)がめつい子すき

4)アールピーさん肝心なことの説明忘れてません

5)1000兆円ほしいよな

6)俺はこのみ使用済みの鼻輪で我慢するよ

7)我慢できてない件

栄養神)無理して笑う仲良し女子高生からしか取れない栄養がある

9)あやうく同意しそうになった

10)その栄養は確かにある。俺も毎日取ってる

11)初見だけど転生者って毎回こんな仲いいの?

12)10シーズン位までは無関係な人間を集めてパーティー組ませてたりもしてたから仲良い悪い以前のことも多かった。それ以降は関係性の深いグループをそのまま転生させてるから基本仲は悪くない。でもここまで仲良いのは珍しい、最後まで仲良いかは別だが

13)伝説の13シーズンを忘れるな………

14)13シーズンの話はルールで禁止スよね、忌憚のない意見ってやつっス

15)まとまらない事で有名な神界が、こいつら早く全員リタイアしろという声を揃えた伝説の参加者達

16)ギスギスを超えたギスギス

17)13シーズンの話はこれで終わり、いいね?

18)また皆13シーズンの話してる…

19)人気投票っていつからだっけ

20)初回は1話終わったすぐ後だったはず

21)投票したいけど顔と名前がリンクしない…

22)ショートのイケメン風の子がユウ、ポニーテールのリーダーっぽい子がこのみ、声と顔が可愛いのがノノカ、胸が大きいのが俺のうるる

23)俺のなんだが!?

24)そして白いモフモフが俺のアールピーさん

異国の神)今回はアールピーが物語を進めるより個人の魅力を伝える構成にしてくれているね。彼女たちの個性がよく分かるよ。

このみは責任感が強そうだし判断力がある。よいリーダーになりそうだけど、異世界はストレスが多いから不満や不安を抱え込むタイプようだと心配な面もあるね。

ユウは一見変人に見えるけれど、他人をよく見てフォローしてるね。僕個人としては彼女はあまり好きなタイプではないけれど、奇を衒った言動も何故か不快には感じない。面白い個性だ。

うるるは稀にいる何故か許される存在に見える。自信家な部分と引っ込み思案な部分が交互に登場するようで、見ていて飽きないね。日本では彼女のような性格は排除されやすい印象があるけれど、ほかの子たちとの相性がいいのかな。

ノノカは明るくて何を考えているか分かりやすい子だね。コロコロと表情が変わってチャーミングだよ。ただ年相応に繊細なところがあるから、常にケアが必要だね。

ボクが一番気になってるのがゴスっぽい服装をした子かな。会話に加わらず、距離を取っている。とてもミステリアスだね。早く彼女の声が聞きたいな。

26)お前らが胸がどうこうとか言ってる時にこの分析力よ…

27)お、おれも異国の神と同じこと思ってたし!!

28)次回はそろそろクエスト開始かな?

29)例のイベントとどっちが先になるかだな。どっちにしろ楽しみ

書き貯めてた部分が終わったので、ここからは火曜と土曜の週2更新になると思います(多分)

1500文字ずつであれば隔日でも行けそうですが、更新頻度が高いほうがいいのか、ある程度がボリュームがあるほうがいいのかは永遠のテーマですね。

ということで、投稿間隔はあきますが、区切りの良いところまではちゃんと終わらせますので、引き続きお付き合いいただけたら幸いです。


いつかXとかで人気投票できるくらい見てくれる人が増えるといいなぁ(遠い目)

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