けっちゃく!(1)
「くるよ!!」
(このみの言葉に導かれるように、2頭の大柄な羊狼が駆け出す)
「スキル『回し蹴り』!!」
(このみの蹴りがそのうちの一頭の胴体を捉える。地を這うような低空の一撃は、肋骨を砕き肺を潰す)
「グアゥ!!」
(味方を囮として利用したもう一頭が、短いと咆哮とともにこのみに襲いかかる。稚拙な連携ではあるが効果的だ)
「このみ、危ない!!」
「ギャウッ!!」
(牙がこのみに届こうとした刹那、幼児の拳ほどの石が敵の側頭部を捉え、羊狼は頭から血を流し昏倒した)
「ユウ、ありがと。でも、なんで石!?」
「ふっ、同じくMP切れ」
(ユウは髪を冷や汗を隠すように髪をかきあげ、すぐさま地面に転がっている小石を幾つか拾い上げ、敵を威嚇する)
(うるるとノノカもその姿を真似るように木の枝や石を握りしめ、振りかぶることで牽制を続けた)
(その警戒網をすり抜けるように背後から響くダッっという足音。少女達の目を盗み、後方で詠唱を続ける桃子を襲わんと、一頭の狩人が襲いかかる)
「いつの間に後ろに!?ダメッ、間に合わないっ………」
「皆んな、目を瞑ってっ!!聖光!!」
(誰もが手遅れかと思ったその瞬間、桃子目がけ走りくる敵の鼻先で激しい光が明滅し、その光源を目にした者の視界を奪った)
(少女達はノノカの呼びかけに応じて目を細めていたため辛うじて難を逃れたが、敵の多くは脳髄を刺すような光の矢に悶絶し、遠くにいた者も突然の事に怯え身をすくめている)
「ワォーンッ!!!」
(頭目と思われし、赤銅色の毛皮を持つ一際立派な体格の羊狼が遠吠えをあげると、少女等を包囲していた者もみな退き、再び距離を対峙する形となった)
「ノノカちゃんナイス!!もう、あんな隠し球があったなら教えてよ」
「すいません、無我夢中で………役に立てて良かったです」
「桃子ちゃん、スキルが発動するまであと何分くらいかかりそう!?」
「3分、3分頑張って!!」
(このみの問いかけに桃子は必死に弦を掻き鳴らしながら応える)
「3分かぁ、これまで通りのやり取りが続くなら、耐えられなくはないかな」
「でも、敵も今度は全員で襲いかかって来る気らしい。一気に押し切られたら、桃子を守るどころか自分の身も危うい」
(ユウの言葉に表情を曇らせる一同。そこには先ほどまでの楽観や余裕は微塵も感じられず、この世界で懸命に戦い生き延びようとする強い意志のみが、彼女達の肉体を支えているように見えた)
「くるっ!!ノノカちゃん、私が前で暴れるから、私を無視して後ろに来た奴らにさっきの光をお願い!!ユウとうるるちゃんは石でも枝でもいいから、とにかく投げて振り回して、桃子ちゃんに敵を近づかないで、頼んだよ!!」
(残りの面々が返事をする間もなくこのみが単騎で飛び出し、半数程度の敵がそちらに引き寄せられる)
「ノノカ、来るよ、頼んだ」
「……………」
「ノノカ?何してるの、早くしないと不味い………ノノカ!?」
(ノノカはユウの呼びかけに反応せず、ジッと地面の一点を見つめる)
「さっきはいきなりだから驚かせられたけど、同じことをしてもきっとダメ、この子達には学習能力がある………対応されちゃう…………。ユウ先輩、失敗したらすいません、でも私はこれが一番良いと思うんです!!」
「ノノカ、何を言って………えっ!?」
「聖光!!」
(ノノカが魔法を唱えると、周囲が光の洪水で満ちていく。しかし、先ほどまでとは違い、その光は空中に生まれ太陽のように輝いているわけではなかった)
(光の源………それは『このみ』である)




