はつせんとう!(4)
(奥深い森の澄み切った空気に、およそ似つかわしくない白い湯気がたちのぼる。辺りは食欲を刺激する揚げ物の香りに満ち、ここが何処なのか、今いったい何が起こっているのか、全ての者の判断を鈍らせる)
「うるるちゃん、何でもいいからスキル使ってとはいったけど、いくらなんでもこれは意味がない………………えっ、ええっ!!??」
(うるるの判断に異を唱えようとしたこのみは、自らの目を疑った)
(食べているのだ)
(羊狼達が突如目の前に現れた御馳走を前に、敵と目の鼻の先ほどの距離にいる事も忘れ、一心不乱に地面に転がるからあげクンに貪りついているのだ!!)
「………食べてるね、私達のこと無視して」
「えへへっ、からあげクン美味しいですからね、ある意味最強です」
(このみの呟きに対し、うるるが照れくさそうに笑みを浮かべる)
「このみ先輩、コレってもう戦う理由ないですよね?この子達もお腹が空いてたから襲ってきたんだと思いますし、アールピーさんが言ってたみたいに、本来は臆病な性格だっていうなら満腹になれば流れ解散でいいような………」
(ノノカの言葉に一同は顔を見合わせるが、その発想には大きな落とし穴があった)
(何故なら、スキルで生み出された物は確かに一時は実物同様の効果を発揮するものの、時間経過によりただの紙に戻る。つまり、どれだけ食べようとも、決して空腹は満たされないのだ)
(時間稼ぎこそ出来るが、後に残るのは飢えが満たされない苛立ちに支配された獰猛な獣の群れのみ。少女達は残された時間でどのような策を練るというのか!!少女達の運命は如何に!?)
「えへへっ、結局無駄だったみたいです、すいません」
「いえ、よくやったわ。おかげでマニュアルを読み込めたもの。ここからは私に任せなさい!!」
(これまで沈黙を保ってきた桃子が遂に立ち上がる。その表情に不安や怯えの色は一切なく、自らが為すべき事への確信が見える)
「桃子ちゃん、ずっと黙ってると思ったら、スキルの説明欄読んでたの!?」
「別にいいでしょ、私はしっかり理解してから実践したい派なの!!とにかく、今は口論してる時間はないわ。食べ物に気を取られてるうちに………いくわよ!!スキル『演奏Ⅲ』………破滅へのプレリュード!!」
(………)
「…………」
「「「………」」」
片腕を前に突き出し、魔法を放つような姿勢で固まる桃子を見守るように、敵味方ともに動きを止める。
「何も………起こりませんね」
「い、いや、私が間違えるはずないわ!!マニュアルには初期から『演奏Ⅳ』までは使えるって………」
(桃子は急ぎ宙に浮かぶステータス画面からスキル詳細を確認する)
(桃子の職業は『吟遊詩人』)
(自ら奏でる音楽により、攻撃から回復、支援まであらゆる奇跡を起こすことが出来る、音の信奉者)
(ちなみに吟遊詩人は初期装備としてリュートを有し、それをかき鳴らすことでスキルを発現させることが出来る。ただ腕を前に突き出し、スキル名を叫んでも効果は表れないので要注意だ!!)
「それなら黙って見てないで最初にツッコミなさいよ!!」




