はつせんとう!(1)
括弧書きの部分はアールピーさん渾身のナレーションです。
普段は可愛い声をしていますが、ナレーション時は昭和のバラエティーを彷彿とさせる暑苦しいキャラを演じていますので、そのイメージでご覧ください!!
(少女達をぐるりと取り囲む猛獣の群れ。彼らの正体は森の奥に潜む、姿無き狩人「羊狼」)
(昼なお暗き森に迷い込んだ獲物に催眠をかけ、無抵抗となった所を音もなく襲う狡猾なモンスター)
(普段は人前に姿を現さない彼らが白日の元に踏み出したのは、数にたのんでのことか、それとも目の前にチラつく極上の獲物を前に我慢が限界に達したのか………)
(異世界を生き抜くための知恵と力の結晶たる『職業を得た彼女達は、獰猛な肉食獣の爪牙を逃れ、人里に辿り着くことが出来るのか)
(少女達の命を賭けた戦いの火蓋がいま切って落とされた!!)
距離を取り対峙する両者の頭上から、一昔前のバラエティーかのような煽り文句が鳴り響く。
「この声ってアールピーさんですか!?」
ノノカは音声の出所を探すようにキョロキョロを周囲を見渡す。
「多分。編集のために消えたと思ったら、ナレーターまで兼任してるとか、日本企業もびっくりブラック」
「でも、敵の注意も逸れてるみたい」
「えへへっ、羊狼って、羊なのか犬なのか気になります。見た目はちっちゃい狼ですけど………」
(このみが指摘する通り、羊狼達は扇形の陣形をとり遠巻きに威嚇するだけで、襲い掛かろうと言う気配はない。相手の隙を窺っているのか、それとも………)
(ちなみに羊狼と言うのは現地人による俗称で、相手が大人の男性であれば滅多に襲ってこないことから、羊のように大人しい狼という事で名付けられたという)
「なんのトリビア!?」
(少女達が得た力『クラス』から派生する『スキル』は、クラスが付与されると同時に肉体と精神に刻まれ、習熟度の差こそあれ、この異世界を照らす神の奇跡として、敵を打ち破る強力無比な武器となる)
(スキルは時に女子供の膂力をもって一刀の下に大岩を打ち砕くことを可能とし、それはまさにこの異世界において顕現された神の御業と言えるだろう)
「うぅ、アールピーさんが大事な事を言ってるのは分かるんですけど、全然頭に入ってこないです」
「わざとらしい説明。明らかにスキルを使えって誘導してる。たぶん私達に勝って欲しいというより、絵的に映えるように」
「なんか良いように操られてる気がするけど、このまま睨みあってても埒があかないのも確かだよね。わかった。アールピーの言う通り、なんとなくスキルの使い方は分かるし、私が前に出て注意を引くから、みんな援護して!!…………じゃあ、いくよ!!」
(このみは意を決したかのように待ち構える敵の中央に飛び出す。予想外の行動に動揺する羊狼。しかし、そのうちの一頭が勇猛果敢にも正面からこのみに飛びかかる)
「わかんないけど、いくよ!!スキル『正拳突き』!!」
(このみが脳裏に浮かんだ言葉をそのまま口にすると、俄かに拳が輝きを帯び、首筋を狙って跳躍した羊狼の顔面にめり込んだ)
「このみ先輩!!」
(ノノカが反射的に叫び声を上げるが、それはこのみの身を案じてのものか、それともこのみの拳技に感嘆してのものだろうか。腰を深く落とし、引き手をしっかりと脇に寄せ、右手を槍のように突き出したこのみの『正拳突き』は、一撃のもとに羊狼を昏倒させていた)
「凄い、自然に身体が動いた。これが『スキル』!?」
(このみは己の身体に与えられた恩寵を確かめるように、握った拳をマジマジと見つめる)
(肉体を駆使し先陣を切り、己の肉体のみで敵を打ち倒す)
(このみに与えられた職業)
(それは『格闘家』である!!)




